【暗闇】
午後6時。
「海愛ちゃ〜ん、ご飯できたよ〜」の声で私はリビングに向かった。
「ごめんね、本当は唐揚げ作ってあげたかったけど無くてねぇ…
チーズハンバーグ作っちゃった。」
おばあちゃん、ありがとう。
チーズハンバーグ大好きだよ。
あと、2日連続唐揚げを回避してくれてありがとう。
好きだけど、立て続けに食べるのはキツイから。
という思いを凝縮して
「ありがとう」という一文になってしまった。
「いただきます!」の合図で食べ始めたチーズハンバーグは、やっぱり美味しかった。
いくらでも食べれそう、でも太っちゃいそうだからなぁ…
でも箸が止まらない。止まってくれない。
「おかわり、いる?」
「うん、いる!」
食欲に負けた。
「ごちそうさまでした!」の後には一緒にデザートを食べた。
私はカステラ、おばあちゃんはシフォンケーキ。
「これ、めっちゃおいしい…!」
「でしょ?東京駅の近くで買ったの」
こんなに安心して笑えるのはいつぶりだろうか。
槇原さん夫婦の家にいた時もこれくらい笑っていたかもしれない。
しかし、泊めてくれることの有り難さ、申し訳無さ、緊張感が邪魔をしていたような気がする。
「海愛ちゃん、難しいことを訊いていい?」
「ん?」
「海愛ちゃんは、なんで家出しようと思ったの?」
時が止まったような気がした。
口の中のカステラは味がしなくなり、
ただ時計の秒針がカチッと鳴る音だけが聴こえる。
「……えっと、来てみたかったから、かな」
「お母さんと、喧嘩したんでしょう?」
はっとした。
おばあちゃん、知っているんだ。
というか、そもそも昨日の時点でおかしかった。
『明日には帰って、ちゃんと謝るんだよ。』
私はお母さんと喧嘩したことを一言も言っていないのに、
「なんで、知ってるの?」
「お母さんからね、電話で聞いたの。
昨日だけじゃないの、先月も相談してきた」
お母さんがおばあちゃんに自ら電話?
そんなことがあったんだ。
「これからの進路をどうするか、食い違っちゃったんでしょう?」
「……うん。」
私はただ頷くことしかできなかった。
なぜか、元気になれなかった。
「そっかあ、お母さんと喧嘩しちゃったのかあ。」
私は俯くことしかできなかった。
おばあちゃんの顔を素直に見れない。
「もう1つ、難しいことを訊いていい?
答えたくなければいいのよ。」
「……何?」
「どうして、学校に行けなくなったの?」
おばあちゃんの顔をそっと見た。
お母さんとも先生とも違う顔。
その顔を見て、私はやっと言葉を絞り出すことができた。
「……自分に、自信が無くなった。
やりたいことが自由にできるわけじゃないし、私がいなくても授業は成り立つし。
みんなより出来ていると思っていたのは勘違いで、私が出来ることは皆も出来るんだって、当たり前なんだなって。
なんか……、私って要らないんだなぁって。」
私は思い返していた。
皆のスペックの高さ、
勉強が当たり前に秀でている人達の集まり、
それ故の挫折。
「置いていかれる」という不安。
「私なんかいなくてもいいんだ」という絶望。
一方的に別れを告げられたバンド。
怒りを封じ込めるのに精一杯だった。
追い打ちをかけるように潰れた、馴染みの楽器店。
友達に心配されても誤魔化そうとしていたこと。
私が弱いだけなのかもしれない。
私は挫折を知らなくて、
だから他の人が耐えられることも無理だったのかもしれない。
それでも限界だった。
家に帰って、毎日自室に籠もってこっそり泣いていた。
「私ってなんて駄目な人間なんだろう」と
自分を責めて、
「じゃあいっそのこと全部終わらせよう」と
思ってもそんなことはできなくて。
どうにもできない上に相談する勇気もなくて、
勝手に壊れて自滅して。
「本当に…我儘だなぁ…」
私は泣き崩れた。
今まででいちばん涙を流した。
そんな私を、おばあちゃんは優しく抱きしめてくれた。
「海愛ちゃんは、十分偉いのよ。
精一杯頑張ってるんだよ」
その言葉を聞いた時、私は気づいた。
私は、ずっと私を諦めていな!かった。
暗がりの中でも、私はまだ腐ってない。
夜9時。
泣き過ぎて目が腫れぼったい。
きっと、明日も腫れぼったい目のままなのだろう。
そして、明日には帰らなくちゃ。
帰って、お母さんにちゃんと伝えなきゃ。
私はいつもより早く眠りについた。
―――――――――――――――――――――
目を開けると、海岸沿いの道にいた。
後ろを振り向くと、白い灯台が見えた。
あ、ここは楽器店の前の道だ。
そこで、ここは私の故郷であると気づいた。
何でここにいるんだろう、
ああ、これは夢か。
そう自覚した時だった。
どこからか花の香りがした。
甘くてうっとりする香り。
そして目の前には、
オトウサンがいた。
【冷淡と紅茶】
子供に紅茶はまだ早い。
そう言われたことがある。
あれは5歳の時だっけ、祖母が紅茶を飲んでいるのに憧れて「私も飲みたい!」と言ったのだ。
すると、「子供に紅茶はまだ早い。」と冷たくあしらわれた。
子供ながらに(大人になった今も思っているけど)「何だよ、偉そうに。」と思ったのを覚えている。
私の祖母は怖い人だった。
とにかく子供への愛情が無い。
私がどんなに可愛らしいことを言っても
「だから何?」という態度だった。
それに対してお父さんは
「まあまあ、そんな態度取らなくてもいいじゃないか」
と言うのだけど、祖母は無視して紅茶を嗜むのだ。
そんな感じなので、親戚一同が集まる場がとてつもなく怖かった。
その一方で、「今日こそは構ってもらえるかな?」と期待する自分がいて、
その期待はことごとく壊れるのだ。
いつしか自分も期待しなくなって、話しかけることを辞めた。
そんな祖母が、この前亡くなった。
老衰だった。
親戚が泣きながら最期の感謝を伝える中、
私は何も言わなかった。
いや、言えなかった。
何かしてもらったこともなければ、
かわいがってもらえたことすら無い。
御恩の気持ちなど一欠片も無かった。
「ほら、貴方も何か言いなさい」とお母さんに促され、
渋々「……ありがとうございました。」とだけ呟いた。
祖母の死から2週間が経ち、身辺整理も片付いた頃、私はカフェに立ち寄る機会があった。
今日は何を頼もうか、無難にアイスコーヒーかな?
それか、紅茶を飲んでみようかな。
幼い頃からずっと駄目と言われていたものは、反動で試してみたくなるものだ。
私はワクワクしながら店員さんに言った。
「紅茶を、1杯ください」
紅茶を待っている間、私は紅茶について調べてみた。
ほうほう、英語ではブラックティーと言うのか、ややこしいな。
へえ、紅茶に含まれるカテキンは免疫力を向上させるんだ。
知らないことばかりだ。
記事を読み進めていくと、ある文が目に入った。
4歳以上の子供は1日に1杯までなら紅茶を飲んでも良い。
ただし、紅茶にはカフェインが含まれているので、飲み過ぎには注意しなければいけない。
へえ、結構リスクあるんだなあ。
カフェインには神経を興奮させる作用があるらしく、過剰に摂取すると吐き気や強い鼓動、けいれんを引き起こすみたいだ。
ああ、祖母はこの事を知っていたのかもしれないな。
これは全て私を守る為の愛だったのだろうか。
祖母がこの世を去った今では、その真実は分からない。
こんなの、ただの妄想に過ぎやしない。
ただ、心のどこかでその妄想が正解であることを願っている自分がいたりするのだ。
「お待たせ致しました、こちらご注文の紅茶でございます」
温かい香りとともに、紅茶が運ばれてきた。
ああ、遂に飲める。
待ち侘びていた、この時を。
しかし、飲もうとするとどうしても祖母の冷たい顔がちらつく。
今もまだ、「子供に紅茶は早い」と言われそうで怖いのだ。
いや、私はもう子供じゃないっつ―の。
色々考えると益々頭が締め付けられるような気になってしまって、
私はええいと一口に紅茶を飲んで、足早に店を出た。
もちろん、紅茶の味など覚えているわけがない。
【アイコトバ】
東京駅に着くと、見慣れた顔を見つけた。
写真と照らし合わせて、私は胸が一杯になる感覚を感じた。
おばあちゃん。
オトウサンのお母さん。
2歳の時に会ったきりだが、変わっていない。
おばあちゃんは私に気づいたみたいだ。
手を振った。
ああ、懐かしい。
私は嬉しくて嬉しくて、駆け寄った。
「おばあちゃん!」
おばあちゃんに抱きついた。
「よく来てくれたね、東京に。
大変だったでしょう」
「うん…!」
なんだか、涙が出てきた。
なぜだろうか。
この家出生活、短い間に色んな感情を経験した。
怒り、ワクワク、不安、疲労、孤独、
懐かしさ、興奮、寂しさ、焦り、驚き、
嬉しさ、申し訳無さ、心の震え、決意。
たった1日半のことなのに、ありとあらゆる思い出が脳を高速で走っていった。
そして今は、安心を感じている。
「不安だったでしょう、もう大丈夫」
おばあちゃんの愛言葉は、今の私にとって何よりも信じられるものだ。
電車で約1時間のところにあるのは西東京市、オトウサンや晋也さんの生まれ育ったところだ。
そしておばあちゃんは今でも西東京に住んている。
私は2歳の時に1回だけ訪れたことがあるが、よく覚えていない。
ただ、おばあちゃんの家は古民家だったということは覚えている。
電車に揺らり揺られて私は眠り、
気づけば、田無駅に着いていた。
おばあちゃんの家はやっぱり古民家だった。
一目見て「あー、こんな感じだったな」と思った。
こんなに記憶力が良いのに、オトウサンのことは何一つ覚えていないのが不思議だ。
中に入って、畳に倒れ込むと温かさが私を包みこんだ。
その温かさに身を委ねて、いつしか私はまた眠り込んでしまった。
夢の中では、私は家にいた。
自室から出て、リビングに向かうとお母さんが既に座っていた。
私はうつむき、拳をぎゅっと握りしめて言うのだ。
「お母さん、ごめんなさい」と。
1時間ほど眠っていたみたいだ。
「うわ、今日の夜寝れなくなるかも」なんて考えていると、おばあちゃんがやってきた。
「ずいぶん寝てたね。
お母さんにはさっき電話したから。
明日には帰って、ちゃんと謝るんだよ。」
そう言い残して、おばあちゃんは夕飯の支度に戻った。
この家出生活は明日で終わることが確定した。
明日までに、ちゃんとオトウサンのことを知り尽くすことができるのか。
明日、ちゃんとお母さんに「ごめんなさい」と言えるのだろうか。
それを言葉にすると、哀言葉になってしまいそうな気がして、私は押し黙っていた。
【冬の天使】
栗尾寧々だから、クリオネ。
これが私のあだ名。
私の人生の三分の二は「クリオネ」という名前と一緒だ。
それはどうやら高校生活でも変わらないみたいだ。
班で自己紹介をすることになった時、名前を名乗ると
「え、お前クリオネじゃん」と言われた。
「クリオネ?」
「そ、栗尾寧々だからクリオネ。
久しぶりじゃん!俺のこと覚えてる?」
私はその顔に見覚えがあった。
田口春樹。
小学生の時、同じクラスだったことがある。
いや、ほとんど同じクラスだった。
腐れ縁というやつなのだろうか、
まさか高校でも同じクラスになるなんて。
「え、二人って友達なの?」
私はその言葉に、顔を真っ赤にして答えた。
「い、いや、友達じゃないしっ!」
春樹は昔からしつこかった。
なぜか私に話しかけるばっかりで、
なぜか帰り道も一緒で。
毎日毎日、「おはよー、クリオネ!」とやかましい挨拶をしてくるし。
正直うざかった。
飽きるほど顔は見たし、声も聞いた。
家族に次ぐくらい一緒にいる。
うざかった。
それでも、中学生の時よりは全然楽しかった。
中学生の時は…
入学して1ヶ月。
一緒にお弁当を食べるいつメンもできて、
今年もやっぱり「クリオネ」という名前が浸透してきた。
そして、今年もやっぱり春樹がしつこい。
「今日さ、一緒に帰ろうよ!
あそこ寄り道しよ!
えーと、どこだっけ?」
また一人で何か言ってる。
「いや、今日は部活あるから。」
私はそっけなく言い放ち、廊下の混雑に紛れていった。
私は文芸部、春樹は軽音楽部に入った。
意外と音楽好きなんだな、と思った。
小学生の時にサッカークラブに入っていたから、てっきりサッカー部に入るのかと思っていたけど。
私は私で、読書家だから文芸部に入った。
週に1回しか無いけど、先輩は面白いし、同級生とは話が合う。
満足な生活だ。
「失礼しまぁす。」
部室―狭い謎部屋に入ると、既に山岡先輩がいた。
「久しぶり〜」
山岡先輩は緩い雰囲気が魅力的だ。
良い意味で先輩だと思えない。
「クリオネが勧めてくれたショートショート読んだよ〜」
「え、本当ですか!どうでした?」
「いや〜、めっちゃ良い!
5分で読めるのに映画1本分見た気分だよ。
なんで今まで読まなかったんだろ?」
文芸部では、この会話が日常だ。
他にも好きな絵師の話など。
快適すぎる。
こんなに心地よい生活を送れるなんて、いつぶりだろうか。
友達が当たり前にできて、当たり前に話が合うこと。
私は、それが当たり前で無いことを知っている。
なぜなら、
私は中学生の時にいじめられていたから。
きっと春樹は知らない。
これは、私の回想を交えた青春物語だ。
【春の来ない冬】
朝日の眩しさで目が覚めた。
見慣れない部屋、見慣れない布団。
そうだ、私、家出してるんだった。
寝ぼけた頭のままでいられたらどんなに幸せだっただろうか、そんなことを思いながら一階へ降りた。
「あ、海愛ちゃんおはよ!ぐっすり眠れた?」
「はい、」
「朝ご飯もうすぐできるから、着替えておいで」
私は眠気の残る体を引きずって洗面所に向かった。
ああ、家出2日目か。
お母さんはまだ家に帰っていないだろうか。
本当ならば、この時間には朝食を作っているところなんだろうけど。
私は不思議でならなかった。
なぜ自分がこんなことをしているのか、
なぜ自分は家出をしようと思ったのか、
何の計画性も無い家出が、なぜ上手くいっているのか。
自分の身に起こっていることが不思議だった。
それも、全て自分が起こしたことなのに。
朝食を食べ終わった後、私はある人に電話をした。
流石に何とかしなければ。
もう誤魔化せないから。
「えー、本当にいいの?もう一日泊まっても良いんだよ?」
「これから大丈夫?ほら、東京って広いからさ、迷子になっちゃったり…」
槇原さん夫婦から心配されるも、私は強く言った。
「大丈夫です。
昨日から色々とありがとうございました。
本当に、本当に感謝しています。
でも、もうこれ以上迷惑はかけられないので。
…あの、何かお礼をさせてください。
こんなにお世話になったから、何かお礼をしないと気が済まないです」
これは本心だ。
これ以上お世話になってはいけない。
私は「ちょっと早めの夏休みなので旅行しにやってきた」のでは無い。
これは家出なのだ。
私は槇原さん夫婦に嘘を吐いている。
これ以上は、もう誤魔化せない。
「…そっか、寂しくなっちゃうね」
夏子さんは寂しそうに言った。
きっとこれも本心だ。
「またいつでもおいで、私たちはどこにも行かないからさ」
「また会える日を待ってるよ」
最初は敬語だった晋也さんも、今では柔和な口調になっている。
「…最後に、お願いを聞いてくれないかな?
わがままかもしれないけど。」
晋也さんは私をじっと見つめて言った。
「海愛ちゃんの歌声を、聴かせてほしいんだ」
…え?
一瞬、何が起こったのか分からなかった。
3秒経ってから、脳がやっと言葉を食べ始めた。
私の歌声を、聴かせてほしい…?
「いや、やっぱり大智の子供なんだなって。
喋り方も振る舞いも、どこか似ているんだよ。
なんだか…懐かしくなっちゃって。
あれからずっと、大智の歌声を聴いたことがなかったから。
聴きたくなっちゃって。」
夏子さんも「うんうん」と頷いている。
「え…そんなの、無理ですよ…
私、そこまで上手くないし…」
しかし、晋也さんの目を見て、そんなことは言えなくなってしまった。
砂漠で水を求めるような、欠けたピースが埋まらないことを悲しむ目。
ああ、私はオトウサンの代わりに晋也さんの心を埋められる人なんだ。
私はギターを手に取った。
「えっと、上手くないんですけど、弾いてみます…」
私は息を吸った。
自分の部屋で、何回も何十回もやってきたじゃないか。
ピックがギターの弦に当たるのを感じながら、喉が確かに声を出しているのを感じながら、
私はずっと考えていた。
晋也さんは、何年も耐えてきたのだろう。
親友を失った悲しみ。
親友の最期に立ち会えなかった悲しみ。
心に穴が空いて、風が吹いて「寒い」と独りで凍えることの辛さ。
それらを消化することはできないから、ずっとモヤモヤしている。
学生時代が夏ならば、今は冬だ。
春の来ない冬。
オトウサンは先に逝ってしまって、「いかないで」って晋也さんが叫んでる。
オトウサンも冬に取り残されたままなのに。
私はずっと変なことを考えていた。
歌いながら考えて、「私はなんてヘンなことを考えているのだろう」と思うも、また考え始める。
気がつけば、歌い終わっていた。
思考に囚われすぎて、自分が歌っているという感覚を見失っていた。
次に拍手が聴こえてきた。
「すごい、すごいよ。海愛ちゃん、すごいよ!」
夏子さんは興奮しながら言った。
「こんなに素敵な歌、聴いたことない!」
一方、夏子さんの隣で晋也さんは
泣いていた。
「…やっぱり、大智にそっくりだよ。
大智が帰ってきたって、そう思ったよ…」
晋也さんは「こんな恥ずかしい姿、見せられない」と言わんばかりにゴシゴシと涙を拭いて、
「さ、行こっか。」
と鼻声で言った。
車に乗せてもらって20分。
「わあ、すご…」
東京駅が見えた。
テレビで見てたやつだ!
「東京駅、すごいよね」
晋也さんは、すっかり元の声に戻ったみたいだ。
近くのコンビニに停めてもらって、私は車を降りた。
「本当に、本当にありがとうございました!」
「また弾き語り聴かせてね」
「お互い元気で!」
「また手紙送ります!」
私たちは別れた。
槇原さん夫婦は車に乗って走り去っていった。
少しだけ寂しくて「行かないで」と思ってしまったけど。
私は私で、やるべきことを進めなくちゃいけないから。
いつかまた会えることを信じて。
私は歩き出した。
約束の場所は東京駅。
そこには、おばあちゃんが待っている。