4/20/2025, 12:40:07 PM
情緒がないと思われるかもしれないが、星を綺麗だなんて思ったことがない。
【星明かりに沈む】
真っ暗な夜を高潔に照らす……なんて言ったって、何光年、下手したら何十、何百光年も離れた座標から放たれるそれはあまりに頼りなくて、そんなものより今手元にある100均のランタンの方が全然明るい。
――あれがしし座。で、あの一番明るいのがレグルスね。
馬鹿な人だ。僕がそんな話をちゃんと聞くような人間じゃないって、わかってたくせに。君が隣にいなかったら、教えてもらった星座の座標も見失う僕なのに。もう、君の言ったしし座がどんな形をしていたのかも覚えていない。しし座で一番明るいレグルスは、獅子の体のどの部分にあったっけ。
辛うじて、あれが春の星座だと話していたことは覚えている。だから春になる度にこうして夜中に外に出て、ずっと探している。けれど、見つからない。だから星って好きじゃないんだ。ごちゃごちゃと散らかって、本当に見つけたいものが埋もれてしまう。
こんなことなら、君の話をちゃんと聞いておけばよかった。「なんで僕にそんな話をするんだ」なんて下らない憎まれ口をきいていないで、ちゃんと。
彼女が指差した先をろくに見もせずに、よくわかっていなかったくせに、それを知られるのが嫌だった。わからないことをわからないと言える僕だったら、今でも君の隣にいたかな。
そういえば、「なんて僕にそんな話をするんだ」に対する彼女の答えも、よく理解できないまま流してしまったな。そっちも聞いておけばよかった。
――だって、春は毎年来るじゃない。