3/3/2025, 11:15:41 AM
それは、二人で桜を見に行った日だった。
隣に並ぶ彼は病弱で入院している。ようやく看護師に外出許可をもらうことができたのだ。外に出ると、体感ではあまり風がある訳では無いのに、桜はおかしいほど揺れていた。桜はこちらをひらりと囲うように飛び交う。桜に囲まれて、彼は初めて言葉を口にした。
「ひらりって、綺麗だね」
入院してから一度も見ることの出来なくなった彼の笑顔は、桜と共に散ったのだ。ひらりと。
3/2/2025, 11:47:26 AM
「あなたは誰?」彼が私にそう言い放ったのは稀ではない。彼は事故で記憶喪失になったのだ。全て、居眠り運転をしたトラックに撥ねられたせいだ。私は、彼を諦めることは出来ない。
「私は、あなたの恋人だよ」