春 葉月

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5/27/2024, 3:38:18 PM

お題:天国と地獄
地獄のような世界だった。
子どもを助けても、怪我で動けない奴を助けても、敵の人間を助けても、ただの自己満足。
世界が良くなるわけではない。
そう思っていた私の前に天使が現れた。
「君がいなくなれば世界が変わる」
そう天使は言った。
迷いはなかった。
私の命一つで世界が良くなるのなら。
これで友であるあいつも平和に暮らしていけるだろう。
天使に従ったことで私は天国に行った。
天国はつまらなかった。
数年経った後、神様に呼び出された。
神様は僕がいなくなった時に誕生した魔王を僕に倒して世界の勇者になって欲しいと言った。
私にしかできないことだと。
どうやら世界を変えることに失敗したようだった。
せっかくだから、もう一度あいつに会えるように記憶をそのままに生まれ変わらせてもらった。
私はかつては敵だった人間に生まれ変わった。
自分の種族であった魔族を相手にするのは気が引けるが、魔王さえ倒せれば、今度こそは世界が良い方に変わる。
そう思い、やっとのことで魔王を倒した。
魔王を倒すと魔王は子どもの姿になった。
その子どもには見覚えがあった。
そうあいつだった。
そうして気づいてしまった。
あいつがどれほど大切なのか。
あいつのいない世界に生きる意味がないということを。
だから共に地獄に堕ちよう。
世界を、神を呪いながら。

5/26/2024, 3:15:06 PM

お題:月に願いを
この世界は争いに溢れている。
今日隣にいる友が明日も一緒にいるとは限らず、恐怖に怯えながら生きるしかない。
生きることが難しいこの世界で、他人に優しくすることはどれほどの勇気がいることだろう。
それを友は簡単にやってのけた。
今日やっと見つけたパンを子どもにあげる。
道端で死にそうな男を避難所に連れて行く。
敵である人間の手当をする。
それがもしかしたら、自分を殺すことになってもいいとそいつは言っていた。
でもそいつは自分が死ぬことで世界がどれほどつまらないものなのか知らない。
自分が死んだことで、魔王を誕生させてしまったなんてことも知らない。
優しくするだけで世界から見放されるなんてそんな世界は滅んでしまえ。
月にそう願いを込めて、あの戦地に足を踏み込む。