夢を見れなくなった
昔はあんなことしたい、こんなことしたいと希望に満ちていたのに
わくわくして、どきどきしていたのに
私が大人になったのか
それともつまらない人間になったのか
夢も希望もないと気づいてしまったからか
あぁ夢を見ていたい。
世の中の辛酸なんか知らない未熟なあの頃のように、愚かな夢を見ていたかった。
叶うならまた、キラキラどきどきした気持ちを味わいたい。
心からそう思う。
不変なものはない。
命あるものはいずれ死が訪れるし、幸せはずっと続かない。
生き物はすべて平等に老いがやってくる。
どんなに栄華をきわめていてもいずれ衰える日はやってくるものだ。
人生はどちらかと言えば苦難の方が多いものだと私は考えている。
今いる場所だってずっと続くとは思っていない。
未来のことはわからない。
悲観的にしか考えられなくて、のんきに未来を思い描けない。
ずっとこのまま、なんて夢見ていられたらよかったのに。
寒さが身に染みて
私の育った町はあまり雪が降らない。
だけど海沿いなので風が強く、そんな日に自転車を乗ると耳が冷えてとても痛い。
マスクをして走行すると酸欠になる上に眼鏡が曇って運転しづらいことこの上ない。
だけど
冬の独特の空気の匂いが好きだ。
白く吐き出された息が好きだ。
ぴりぴりに冷えた空気を切り裂くように自転車を走らせるのが大好きなんだ。
もちろん
冬は水が冷たくてつらい。
霜焼けを起こすとつらい。
暖を取るために着膨れするのが面倒。
寒さが身に染みて動くのが億劫になることも少なくない。
それでも私は冬を嫌いになれずにいる。
あと数ヶ月もすれば春らしく暖かくなるだろう。
きっとみんな春の訪れを待っているだろう。
だけど私は冬が去って行くのがつらい。
毎年、冬が終わることが寂しく、暖かくなることを憂鬱に感じる。
20歳。
周りの人にとっては特別の20歳。
親兄弟に祝われるはずの20歳は私にとって別に特別でもなんでもない、苦い年頃。
私にとってその年齢は周りの友人達とは違う思い出ばかり。
色鮮やかな振袖を身に纏う女性陣の中で、私はスーツ。
実に惨めだった。
いっそ男であればこんな思いせずに済んだのにと悲しくなった。
友人らと再会してもうれしくとも何ともなかったし、親が祝ってくれる訳でもない。
行かなければよかったと後悔した成人式だった。