待ってて
「待ってて」
君は確かにそう言った。物的な証拠はないけれど、確かにこの記憶に残っている。
あれからもう10年が経った。君は今どこで何をしているのだろうか。昔に比べすっかり歳をとってしまった僕を見て、君は僕と分かるのだろうか。今や社会の歯車と化した僕は、もはや君に相応しい人物ではない気がする。君の記憶に縋って生きている僕という人間は、10年前から時間が止まってしまったようだ。
伝えたい
走る、走る、走る。校舎の中を走ってはいけないなんてことは頭から放り出す。まだ学校にいるはずと聞き、校内を駆け回る。俺はお前に伝えたいことがあるんだ。
「見つけた!」
この場所で
この場所で出会えた人は数多いる。なんでも話せるような子がいれば、なんとなく気に入らない子もいた。
この場所で何人もの人との別れがあった。頼れる人や憧れの人。
この場所で色々な思い出が生まれた。内容も思い出せないようなたわいのない会話や一致団結した思い出。
言葉では言い表しきれない様々なことがこの場所であった。
私たちは今日、この学校を卒業します。
誰もがみんな
みんな、生きているから笑う。有名な童謡にこんな歌詞があったななんて、近所の保育園から微かに漏れ出ているのを聴きながら、思い出した。最近では仕事に忙殺されて人前に出る仕事ではないのをいい事に、ろくに表情筋を動かさない日々を過ごしている。笑えていない私は、生きているのだろうか。誰もがみんなそんな笑いながら生きている訳じゃないのにな、なんて考えながら私は縄に首をかけた。
花束
何かあった訳ではないけれど、親友から花束をもらった。黒い薔薇の周りに白い俯いた花が添えられてる。シンプルだけど高貴な雰囲気で、つい見惚れてしまう。お花屋さんで見ていたら私の顔が浮かんだだなんて照れちゃうな。
黒い薔薇の花言葉《憎しみ》
スノウドロップの花言葉《あなたの死を望みます》