雨が降ってたあの日
登校時間もとうに過ぎたあの時間
大好きな先生はあたしに傘をさして手を差し伸べてくれた。
その時(あぁ、この人を好きになってよかった)
心の中でとても感じた
雨上がり
私が先生と肩を並べて手を絡ませて歩いた、
もうずっと降り続けて欲しいって思ったあの日。
雨の中傘を持ってるのにささずに歩いている私に近づいて傘をさしてくれた先生。学校に行くのが憂鬱で泣き出した私に優しく声をかけてくれて学校まで一緒に行ってくれた。登校時間は過ぎているから門にほかの先生はいない。だから手を離すこともせずいっしょにいてくれた。
コロナが本格的に出てきた。学校は休校になる。
大好きな先生と冬休み前「三学期はもっといっぱい話したいし顔みたい!卒業しちゃうと会えないの考えたら冬休みって短いから我慢できそうだよ」無邪気だったあの時は、恥ずかしい気持ちも最大級に押し殺して本音をぶつけた。
三学期の初めの方はまだ休校になるほどじゃなかったけど割かし直ぐに全国で休校になっていったのを覚えている。
休校が決まったのが2時間目。卒業式に歌う曲などを決めているときだった。担任団含む教員が至急職員室に戻るように。とのアナウンスが流れて20分以上。
教室では私たち生徒がざわついて他の地域でちらほらはじまっていた[休校]なんじゃないの?ってワードが飛び交っていた。
少しして担任が戻ってきて「緊急事態宣言が出されたから今をもって休校になります。卒業式とか不安があると思うけど今こんなに時間がかかったのは少しでも式を決行できるように掛け合っていたからです。必ず卒業式が行えるように先生たちも頑張るからひとまずは下校するように」曖昧だけどこんな感じで説明された。
休校と聞いて居てもたってもいれなくなって先生の元に走った。先生もあたしが来るのをわかってたかのように普段は職員室にいるのに渡り廊下で待っててくれてた。
「会えなくなっちゃう」そういう私に「先生たちが頑張ってくれてるから。卒業式練習とかで学校に来ることはできるようにしてくれるから俺も学校来るよ」ってなだめてくれて本当は直ぐに帰らないといけなかったけどずっと話してくれた。
家まで一緒に帰ってくれて「またね」そういう先生を見送ることしか出来なかった。
先生たちの対応はすごく早くてその日の夕方に電話がはいる。「市に掛け合って3年生は1日3時間のみ登校が許可されたので明日から今の状況でだと毎日朝9時からの登校をお願いします。ただコロナ自体まだどこまでの勢力があるのか、いつどのようにして感染するのかが曖昧なのでご家庭の判断に委ねます」と言われた。
先生は非常勤だったので来なくてもいいのに来てくれるから私は毎日通った。学校自体はずっと行きたくなかったから先生が通勤中家に迎えに来てくれて一緒に行っていた。たまに雨が降る日にはひとつの傘にふたりで入った。家から学校が近かったから一緒の傘に入れるのはほんの1、2分だけなのに何十分にも感じた。肩が当たればドキドキするし、先生の香りがすると息をすることも出来ないくらいに緊張していた。
日に日に会える時間が減っていく中で何度も肩を並べて歩いた。
ついに卒業式。もう肩を並べることはなくなるんだろうな。そう思った。一緒に写真を撮って人目を気にせず手を取り「高校生活頑張ってください」そう言いながら強く握られた。頑張らないといけない。そう思った。
卒業式が終わったからもう先生が学校に来るのも三月末しかないと思っていた。私が悲しくないように毎日通勤してくれていた。卒業式が終わっても会える環境を作ってくれていて本当に嬉しかった。
30日この日も雨が降っていた。傘をさしながら歩く先生に挨拶をする。「俺今日で最後やから、もうこうやって会えることはなくなるけどずっと応援してます。嫌なことから逃げるのも一つの手です。今までたくさん頑張ってるの知ってるよ。休むのも大事だからね」たくさんの優しさをもらった。私がちゃんと先生の顔を見れるようになったタイミングで雨が上がった。「せんせ、空晴れたよ。せんせに出会えてよかった。大好き。成人したら結婚してね笑」我ながら馬鹿だなって発言をしたのに先生は「ずっと好きでいてくれてありがとうございます。本当に嬉しいんだけど、今は何も言えない。ずっと気持ちが変わらなかったらまた会いに来てください」淡々とした口調で話される。
元々叶うはずのない恋だってわかってたけど、やっぱり少し悲しくなった。あんなに土砂降りだったのにたったの数分でここまで太陽が出てるんだ。きっと先生との別れはいい未来に繋がるんだ。そう思って私は先生に手を振る。先生も私に手を振る。「いままでたくさんの気持ちをありがとうございます」そういう先生に「こちらこそ大好きって気持ち沢山伝えさせてくれてありがとう。ずっとずっと先生が1番大好きです」言い捨てるように吐き出しお互い背を向け歩いた。
私は振り向かなかった。ここで自分の足で進むって決めたから。先生はどうでしたか?振り向いてくれしたか?私が大人になれるよう振り向くこともしなかったですか?
あの日あの雨のタイミングで手を差し伸べてくれた先生はこの日雨が上がってから私の手を離してくれました。
今まで土砂降りだった人生が先生のおかげで晴れやかな高校生活を送れました。
彼に出会えたその日が人生の勝ちで
彼と別れたあの日が人生の負けになった
私が私である限り
いつまでも続く人生。
人生こそが壮大な物語。
もしどこかで違う私に出会った時
それは、今までの物語から
新しい章に変わって
別の物語が始まる。
あたしも他人も毎日せくせく働いたり通学したりしている。
慌ただしい毎日は今日から明日へ明日になればまた今日から明日へと渡り続けている。