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8/26/2023, 1:22:48 PM

空が綺麗だったから写真を撮る。そうしたら彼女を思い出した。ふらりと何の予兆もなく消えた彼女のことを。
彼女はいつも空を撮っていた。青空、曇り空、夕焼け空…ふと気になって何故空を撮るのか聞いてみたことがある。
「うーん、なんて言えばいいんだろう。これはね、私にとっての日記帳なの。」
そう言いながら彼女はアルバムアプリを立ち上げ空写真を大切そうに眺めていた。
聞いた時は率直に言うと意味が分からなかったが今ならわかる気がする。
―あぁ、本当に最悪の日記帳だよ。おかげで空を見る度に君の事を思い出してしまう。

8/26/2023, 9:16:02 AM

檸檬の彼女

一目惚れだ。僕は彼女について、檸檬モチーフのピアスをしていること、梶井基次郎の本が好きなことしか知らない。いや、梶井基次郎が好きなのかはただの憶測だ。彼女とは毎日出勤のために使ってる電車で見かける程度の関係だ。電車内はスマホに目を落としている人がほとんどだというのに彼女はいつも本を読んでいた。時々彼女と向かい合わせになるとき、本の背表紙を覗くのだが、決まって梶井基次郎の本だった。僕は全然本を読まないタイプの人間だったが彼女との共通点を作りたいがために最寄り駅の近くの図書館に向かった。

8/24/2023, 2:42:19 PM

「やるせない」と私の輪郭

「やるせない」日常ではもちろん、アニメや漫画でも消費されるありふれた言葉のひとつだ。そんなことを言っておいて、私はきっとその意味を問われた時正確に答えることは出来ないのだろう。まあ、「やるせない」に限ったことでは無いが。そんな実態に嫌悪感を抱いた。きっと、私と似ているからだろう。ぼんやりとしていていつまでも輪郭がハッキリとしない感じ。ああ、これは「やるせない」に失礼だな。「やるせない」という言葉はしっかりと広辞苑に載っていてぼんやりとしているのは受け取る側の能力不足にすぎないから。私の輪郭も広辞苑にのっているようにハッキリと定められたものだったら良かったのに。

8/24/2023, 2:27:00 PM

彼女の呪い

「海に溶けてしまいたいな。だって、海って私たちが思うよりすごく大きいでしょう?自由って感じがするじゃない。」
彼女の突拍子もない話が好きだった。けれど彼女のいない今となっては海を見る度に思い出してしまう、呪いとなった。

8/23/2023, 7:22:07 AM

さよなら

分かっていたことだろう?
何がって…君が裏切る側の人間で私が裏切られる側の人間ってことさ。さあ、だから早くこの手を離すといい。

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