荒城

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9/8/2025, 2:51:19 AM

【雨と君】

めくるめく旅路の途中で、僕は恋をした。
窓際で本を読む君。
地面に着くまでの短い間の恋だった。

9/6/2025, 3:12:04 PM

【誰もいない教室】

誰もいない放課後の理科教室は、秘密に満ちている気がする。
薬品棚や器具棚がしっかり施錠されているせいだろうか、それとも、特別教室のいつもと違うワクワクした空気のせいだろうか。
少し埃っぽい、午後の傾いた光線の中をゆっくりと歩く。
これが僕の、至福の時間。
誰にも見られないように、ひっそりと。
「見つかると、また七不思議だって大騒ぎになるからね」
そう独りごちると、僕はガラスに映る、半分しか皮のない自分の顔を見て微笑んだ。

9/4/2025, 11:15:48 AM

【言い出せなかった「」】

「お待たせ」
君が帰ってきた。
「ううん」
まだ目を合わせるのも照れくさくて、はにかみながら答えた。
初めてのデート、無理もない。
「ごめん、トイレ混んでてさ」
伏し目がちになった私の視線は、そこで止まった。
「映画、あと5分くらいあるね」
「えっ、あっ、うん、そうだね」
「先にポップコーン買うのもいいかな」
「あっ、うん」
私は何を聞かれてもしどろもどろになってしまう。
「あの……」
「どうしたの?」
「……なんでもない」
「そう?じゃあ、行こうか」
2人分のポップコーンとジュースを抱えた彼が、そう促してくれた。私は頷いて、一歩後ろを歩いた。
隣を歩くのは、少し恥ずかしくて。

彼を待ちながら、そんな懐かしい日のことを思い出していた。
彼がトイレから戻ってくる。あの日のように。
あの日、言えなかった言葉。
──開いてるよ。

9/3/2025, 10:11:16 AM

【secret love】

「そうだよね、辛いよね…」
私がそう言うと、彼女は耐えきれず声を上げて泣き出した。好きな人にパートナーがいたことを知ってしまったのだ。
彼女はそれでも、人知れず思い続ける道を進むという。気持ちが消えるまで。
気持ちが消える日。
そんな日が来るのだろうか?
「思い続けるって、しんどいよ」
私はそう言いながら、彼女の手を握ろうとして、思いとどまった。
報われない相手を思い続けるって辛いんだよ。
私がそれを、一番よく知ってるから。

9/2/2025, 2:55:48 AM

【夏の忘れものを探しに】

海にも行った。川にも行った。
夏祭りにも行ったし、友達に会いに行って懐かしい顔ぶれにも会えた。
でも何か忘れてる気がするんだよなぁ。
なんだったかなぁ。

チリン。

ああ、そうか、お盆はもう終わったんだ。
帰らなくちゃいけないんだった──。

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