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8/20/2024, 3:03:01 PM

「おーい、かえろうぜー」

ああ、またか。そう思いつつ扉に、視線だけ投げる。

「ちょいまちー」

帰りの支度をしていると、家が近いやつに声を掛けられる。毎日毎日、飽きもせずに一緒に帰っているが、割と楽しい。認めたくは無いが。

「準備したー」

一声掛けると、弾かれたように顔を上げてくる。その顔は満面の笑みで。ちょっとだけ、申し訳なくなる。

「じゃあ、行くか」

一拍置いて返事が返ってくる。

「おう」

いつも通りの帰り道だ。




「夏休み、終わっちゃうな。」

年に二回も、長期休みがあるのに。いざ終わろうとすると寂しくなる。休み中に仲良くなった友達、出かけた思い出。それぞれが、非日常を味わえる。けれど、こいつの非日常は引越しだった。

「こんな夏に引越しなんて災難だな。」

「本当に災難だわ。」

嫌そうな顔で返事される。もともと、引越しなんて気乗りするものでもあるまい。けれど、別れと出会いは繰り返されてゆく。

「でもまあ、どこかでまた会えそうだよな。」

案外、そう思ってしまうものだった。夏休みだけの関係みたいなものだったけれど、確かにそう思うのだ。

「じゃあ、さよならなんて言わない方がいいかな。」

「そうだな。」

さよならを言う前に、少しだけ会えなくなるだけ。今生の別れなんてものじゃない。そう考えると、この暑さも軽くなる気がした。


題:さよならを言う前に

4/23/2024, 3:24:12 PM

赤、青、黄色。沢山の色が隙間なく混ざり合う。キャンバスには、濁った1色の黒が残る。それは、何にも動じない安らぎのようなものすら感じられる。

「お前、黒好きだよなー。」

誰かの何気ない一言で、色に気づいた。好きなんじゃない。感情を描いた先に残るのは、黒だけなんだ。今日も、明日も心模様は結局、黒。真っ暗な夜の色なんだ。そこに至るまでの過程が一番儚くて、輝いているんだ。

題:今日の心模様

4/1/2024, 4:04:10 PM

「嘘をついてもいい日を作ったのって、何でだろう。」
誰かが、呟いた言葉。その一言で、教室内は、喧騒で満たされた。
忘れていたという様に、咄嗟に嘘をつく者、考え込んでから、結局嘘をつかない者、人それぞれだった。
「俺、100歳まで生きる!」
俺の隣の席にいるやつはそう言った。
「人生100年時代にそれ言うか?しかも午後だから時効だぞ。」
「え、マジ?」
俺は、ため息をつきつつ、返事した。だが、その後も話しかけてくるので、聞き流しながら、授業が始まるのを願った。

題:エイプリルフール