お題『夢じゃない』

君の手に私の手が触れた。精一杯の私の勇気だった。

君がふわりと笑う。

指に絡まる体温があまりにも大きくて、あ、夢じゃないのかと思った。
君は私の顔を覗き込んで、くすくす笑った。

夢じゃ、ない。

お題『心の羅針盤』

心はこちらを向いているのに、素直にそちらへ行くことは難しい。
だから、風はすごい。行きたい所へ向かい、どこへだって吹く。突然緩んだり、加速したり、止まる。すごいことだと、思う。

お題『またね』

もしもし？元気？
ごめん、ただ声聞きたくなって。元気そーだね、よかった。最近仕事どう？うまくいってる？

うん…え？やらかしたんだ。そっか。
そりゃつらいね。私なら咽び泣いてた。泣いてないの？偉いね。
大丈夫、やらかしても……何とか上がしてくれる！
はは、大丈夫だって。あんたなら誰かが助けてくれるよ。

じゃ、おつかれ、

お題『泡になりたい』

プールの水に、どぼん、と身を投げて、深く沈んだ時。
私は水の中からきらきらする水面を見上げて、天へ還っていく泡を見るのが好きだった。
泡になりたい。
足元からぽろぽろと透明な泡になって、一緒に空気へ還りたかった。
おいていかないで。

お題『ただいま、夏。』

実家に帰ってきた。
何も無いけど、広い家。
あれ、こんなところにこれあったっけ。
花の鉢植え増やしたの。
夜、ころころと虫の鳴く声がする。

ただいま、夏。