お題『波音に耳を澄ませて』

目からの情報を遮断し、耳に集中する。
すべての音がどれだけ違うのかを知るために。
さっきの音より、大きい。
さっきの音よりも高い。遠く聞こえる。短い。そうやって音を味わう。

お題『青い風』

風に色はない。
色はないから、何色でも正解だ。
赤い風はどんな味だろう。
青い風はどれくらいの温度だろうか。
紫の風はどんなイメージだろう。

お題『遠くへ行きたい』

もうどこでもいい、遠くへ行きたい。
私の心だけでも良いのだ。連れて行ってくれ。
少しでも私のところから離してくれ。
今にも引き裂きそうなのだ、煩わしくて。

お題『クリスタル』

宮沢賢治先生は、鉱物が好きだったと言う。

私の友人にも、鉱物が好きな人がいる。

私も好きだ。

あの中に空や宇宙が広がっている気がするから。あの中に、微生物が生きているのだと思う。何を思っているのだろう。
我々が動かす度に、「今日はいやに明るいなあ」とか、「なんだか空がチラチラしてる日だなあ」と思っているのだろうか。
暗い時の鉱物は、どう見えるのだろう。想像のつかない世界が、そこに拡がっている。

お題『夏の匂い』

ああ、今年もこの匂いがする。
蒸し暑くて、じりじりと焼けるような、肌を刺すような、水分を含んだ暑さ。
肌にベッタリとくっつくような。
仰いでもまともな涼しさがない。
それでいて、少しすえたような汗の香り。アスファルトに水を撒いて、その水蒸気を態々鼻から吸っている、あの息苦しさ。
灼熱地獄の空気を吸うようだ。