お題『勝ち負けなんて』
言葉に勝ち負けなんてない。
伝えたい思いがどれくらい伝わって、あなたの気持ちが幾分か、楽になれば良いのだ。
文章が巧みだから勝ち、文章が拙いから負けなんてことは無い。
世界の誰かが必ず心打たれる言葉をあなたは扱えるはずだ。
我々は言葉で人を幸せにも、呪うことも出来る、魔法使いなのだから。
お題『まだ続く物語』
悪者を退治して、平和はもどりました。
めでたしめでたし。
本なら、そこで終わりだ。
でも、私たちはそこで終わりじゃない。
私たちは御伽噺の登場人物ではない。
誰もが等しくハッピーエンディングになる訳では無い。
誰もが祝福を受けられる訳では無い。
だから、共にご飯を食べよう。
君と視線が同じになるように座って、君と同じご飯を隣で食べる。
美味しいね、の一言で、少しでも、君と足を揃えたい。
お題『渡り鳥』
駅のホームを颯爽と歩いていく。
街の横断歩道を、つかつかと。
かんかんと太陽が笑いかける暖かい日も、しとしと雨の降る冷たい日も。
黒や紺色の渡り鳥たちは向かっていく。
強く、強く、その日を、明日を、1年後を生きるために。
お題『さらさら』
七夕の笹の葉はさらさらしている。
さぁあ、と音が出る。
家に竹が生えている。
さらさら。
女性の髪の毛みたいだ。
お題『これで最後』
お弁当をつめた。
冷食の唐揚げ、かぼちゃコロッケ。だしが少し入った卵焼き。ブロッコリーとほうれん草のおひたし、プチトマト。好きだと言っていたから、小さくオムライスを作った。
きっと、これであの子に作るお弁当は最後。
毎朝大変だった。早起きが嫌だと思ったこともある。面倒臭く思うことも、自分で作れとも思った事がある。
でも、結局作ってしまう。習慣化したからというのが正しいだろう。
明日から楽になる。
少し遅く起きてもいい。朝ごはんは勝手に食べられるから。
それにしても、大きくなったものだ。身長がすっかり伸びて、大人に近付いている。中身はまだまだ幼い頃からのあどけなさが残るように思うが、実態はと言うと、それがあの子の性格なのだろう。
しみじみしてしまう。
「…おはよ。」
「ああ、おはよう。お弁当、よろしく。」
「うん。ありがと。」
ふ、と笑った顔は、昔から見てきた笑顔そのままで。
「行ってらっしゃい。」
なんて、笑いかけた。