やばい。
ごみは全部まとめた。
服もクローゼットに詰め込んだ。
溜め込んでた食器も全部洗った。
あとはペットボトルを捨てて、掃除機をかけて、
テーブルの上を整理して...
ああもうあと5分しかない...!
恋人に汚い部屋は見せられない。
時間よ...止まれ...!!!!
「時間よ止まれ」
田舎の祖母の家からは、とても沢山の星が見えた。
早見盤越しに見る夜空がとても好きだった。
しかし数年前からは、山向こうの都市の明かりで
星が見えづらくなってしまった。
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山の中を走っていると、
遠くに都市の明かりが見える。
この景色を見るのが好きで、
ついツーリングにでてしまう。
今夜もぐっすり眠れそうだ。
「夜景」
花畑ってどうして死を連想させるんだろう?
自分にとっての大切な人が、
苦しい現世を離れた後くらいは
お花に囲まれた場所にいて欲しいからかな?
花が散りゆく儚さと、人の命の儚さを重ねてるのかな?
考えたところで答えは出ないけど、
自分の命が散ったときに悲しんでくれる人達が
「あの子はお花畑に行ったんだ」
って想像しやすいように、
いつもにこにこしていたいなぁ。
-花畑-
「狐の嫁入りって知ってる?」
高校最後の夏祭り。
境内に並ぶ屋台のお面を見つめて、親友の空が唐突に尋ねた。
「天気雨のことだよね?」
私は答える。
「そう...」と、どこか浮かない顔の空。
人混みに疲れたのか、はたまた暑さにやられたのか?
いつも元気な空がどうしたのだろうと心配になった私は涼しい所へ行こうと、本殿から少し離れた稲荷社まで連れて行き、社の脇にあるベンチに一緒に腰掛けた。
買っておいたラムネの栓を開けて空に渡すと、空は「気遣わせちゃったね。ありがとう。」と微笑み、ラムネを一気に飲み干す。そしてラムネのキャップをいじりながら、「私、学校辞めるんだ。」と呟いた。
驚く私を後目に、空は話し続ける。
「お盆におばあちゃんちに帰省した時にさ、ぼんやり星を眺めてたら、山の上のお稲荷さんから白い光が降りてきたんだよね。気づいたら私の足元に小狐がいて、『8月31日、約束通りお迎えにあがります。』って。」
「8月31日って...今日じゃん。」と言うと、空は小さく頷く。
何が何だか分からず混乱していると、稲荷社から宙を揺れ動く光の列が、ゆっくりと出てくるのが見えた。信じられない光景に目を見張っていると、空が再び話し出す。
「狐の嫁入りって、地域によっては狐火のことを指すんだ。私小さい頃、雨が降ってるのに山の中で突然灯りが灯ったのが見えて、気になってひとりで山に入っちゃったの。そしたら、白無垢を着たものすごく綺麗な女の人が、狐達と一緒に歩いてて。あまりに綺麗だったから、『いいなぁ...』って小さく声が出ちゃったんだ。そしたら後ろに1匹の狐が立ってて...」
話すうちに、光の列は目の前に迫っていた。
急に話すのを止めたかと思うと、空が私の手に、いつの間にか取り出していたラムネのビー玉を握らせる。
「そういうわけだから、じゃあね。3年間楽しかった。」と笑顔で別れを告げられた途端、星空から雨が降り出した。驚いて目をつむると、空に握られていた手の感触が消える。慌てて目を開けたが、光の列も雨の痕跡も、さっきまで隣にいた親友も消えていた。名前を呼ぼうとしたが、何故か名前が出てこない。
残ったのは、手の中のビー玉と、手の甲に落ちてきた温かい雫1滴だけだった。
―空が泣いた―
朝7時。
目覚ましの音で目を覚ます。
君からのLINEが来ていることを確認すると、
私は朝の支度を始める。
きっと私は、今日もそのLINEを開くことは無い…。
君は毎朝7時に必ずLINEをくれる。
今日は傘を持っていった方がいいだとか、
クーラーで冷えるだろうから
ちょっとした筋トレをした方がいいだとか、
そんな内容だ。
自然災害が起きた時も、いつも連絡してくれるよね。
流石に心配になって確認するようにはしているけれど、
それ以外で開くことは滅多にない。
それでも君は、毎朝私にLINEをくれる。
そのお陰で、どんなに億劫な朝もスイッチが入る。
いつもありがとう。ウェザーニュース。
-君からのLINE-