「「強くなりたい」」
固く閉ざされた日記に書いてある過去からの悲痛な叫び
「大人になっても変わらない。」
そんな独り言が宙を舞う。
世界の中で私だけひとりぼっち。
友達も家族も両親でさえ信用できない。
あの頃と何も変わらない。
諦めてしまえば楽なのに
それでも人を信じてみたい
まるで矛盾してる。
信じては裏切られ
どうするのが正解か今でもわからない
でも
「大丈夫」
過去の私に会えたなら私が守るよ
あなたを傷つける世界から
【閉ざされた日記】
「こんな古くさい手編みのセーターなんて要らない」
またあの日の夢を見ていたことに気付いた
もう5,6年も前の話だ
けど、私はあの時のお母さんの悲しそうな顔が忘れられない
あれが最期だなんて思わなかった
あの時はお母さんの愛情が分からなかったんだ
手編みのセーターがいい
だから
鏡の中の自分はいつだって綺麗だった。
だから私は鏡に聞くの。
「鏡よ鏡、世界で一番美しいのはだあれ」
鏡はいつだって私のほしい言葉をくれたわ。
一番幸せな時間だった。
いつからだろう…
そんな些細な幸せが壊れたのは。
自分の子供を殺したい程憎むようになったのは。
私は殺されて当然だったわ。
あなたにあんな酷いことをしたんだもの。
死ぬ間際、鏡に映った醜い老婆を見て綺麗だった私はもういないのだと知ったわ。
でももうあなたを憎んでなんかいないの。
だって見た目の美しさだけじゃなく心の美しさまで失くした私は私じゃないから。
私はそんな簡単なことすら自分では気付けなかったのよ。
だから、
「ありがとう」
鏡の中の自分
いつまでも捨てられないもの。
それは何があるだろうか。
生まれてはじめて買ってもらったもの
好きな人からのプレゼント
青春時代の思い出
一生消えない友情
親から受けた愛情
すぐに捨てられそうで壊れそうなものだったとしても
大人になるまで手の中、心の中にあったものが本当に
大切なものなんじゃないかな。
私は人生で一度だけ誇らしいと思ったことがある。
私は幼い頃から女の子らしいとは間違っても言われないような性格をしていた。
喧嘩では負けたことなかったし、スカートをはきたいとも思わなかった。
当然、周りの大人は良い顔をしなかった。
「女の子なのに」「病気じゃないの」
親でさえ私に嫌悪感を覚えていたと思う。
けど、幼なじみのそれはそれは可愛い女の子だけが私の存在を肯定してくれた。
その子と一緒にいられるならば何を言われてもよかった。
私たちは同じ中学校に入ってからもずっと仲良しだった。
私も少しは女の子らしくしてグループにも入ったりしてた。
でもその子は可愛くていろんな人からモテてたからいじめられた。
しかもいじめてた人達は私の入ってるグループの子だった。
私は逃げちゃったんだ。弱かったから。
昔は怖くなかったのに周りから何か言われるのが怖くなったんだ。
でもついに逃げ続けられなくなった。
私もその子をいじめなきゃいけなくなった。
いじめなきゃ私が次の標的だから。
ハサミを渡されてその子の前に立った。
前に立って顔を上げたらその子は昔と何も変わらない笑顔で私のこと見てたんだよ。
ビックリしちゃった。
逃げて逃げて逃げ続けたのにどうして?
なんでそんなに笑っていられるの?
って。
そしたら、こんなの私じゃないって思った。
いつから周りの目を気にするようになったの。
その子と一緒にいられれば何を言われても良いって思ったはずなのに。
気づいたらグループの子と掴み合いになってて奪われたハサミで顔に傷が付いた。
周りの大人にはまた「女の子なのに顔に傷なんて」とか言われたけど気にしない。
だってこれは意味のある負傷だから。
私は自分で変われたことを誇らしく思ってるよ。
何をしても必ず否定の言葉を吐かれる世界なら私は私を誇らしく思える生き方をするよ。