夢心地

Open App
8/5/2024, 10:53:30 AM

「今日は○○ちゃんと遊ぶ日だっけ?」
「うん!」
僕は大きな声で返事をした。
「ちゃんと夕方の鐘が鳴ったら帰ってくるのよ。わかった?」
「わかってるよ!」
いつものようにそういうやりとりをして、家を出た。僕は歩いてあの子の待つ公園へと向かう際、1つの疑問を思いついた。なぜ夕方のチャイムが鐘なんだろう。帰ったらお母さんにその事を聞いてみようと思った。

「○○ちゃん!おまたせ!」
「△△くん!」
その子はいつものニコニコとした笑顔で僕を出迎えてくれた。
「3DS持ってきてくれた?」
「うん!通信しよう!」
僕らは3DSを取り出して一緒にゲームで対戦をして遊んだ。今流行りの妖怪クロックというゲームだ。
「もー!△△くん強すぎ!また負けちゃったぁ」
「結構レベル上げ頑張ってるからね!」
「むぅ…次こそは勝つ!」
自分たちのパーティを作り直していると、夕方の鐘が鳴った。
「…わ、もうこんな時間?帰らなきゃ」
「えぇ〜?△△くん、もう帰っちゃうの?まだ遊びたいよー」
正直僕も遊んでいたい。だけど約束は守らなきゃ。
「ごめんね、お母さんにこの時間には帰ってきてって言われてるから…」
そう言って、背を向けようとした時だった。
「なんでなんでなんで????あそぼあそぼあそぼあそぼ」
「え…○○ちゃん?」
「あそぼあそぼあそぼあそぼ、ずっと、えいえんにあそぼう ふたりで、ずっと えいえんに」
○○ちゃんの体が徐々に変形していき、まるで妖怪クロックの中に出てきた妖怪のような…そんな奇妙な姿に変わっていた。
「ひぃっ…!」
僕は○○ちゃんから必死に逃げた。
「あそぼあそぼあそぼ △△くん ねえどうしてにげルノ?ネェネェネェネェ!!!!!!」
「来るな!!!!!バケモノ!!!!!!!!」
怖い気持ちでいっぱいだった僕は、思わずそのような言葉を発していた。
「…バケ……モノ…?」
すると、○○ちゃんだったものは呆然と立ち尽くし、そしてやがて姿を消した。
「な、なんだったんだろう………早く家に帰らなきゃ…っ!」
僕は震える足を動かして、家にたどり着いた。

「△△!おかえりなさい。…どうしたの?」
「…ぼ、僕…、○○ちゃんと、遊んでたら……鐘が、鳴って……っ…か、帰ろうとしたら、○○ちゃんが…っバケモノ、みたいになって、消えて…っ」
「それは…妖(あやかし)ね。大丈夫?怖かったでしょう?」
「あやかし…?」
「ええ。この町にはね、夕方になると妖と呼ばれる化け物が現れるのよ。だけどターゲットは子供だけで、大人の前には現れない。」
「…ねぇ、お母さん。夕方のチャイムがアナウンスとかじゃなくて鐘なのって」
「それはね、アナウンスだと緊張感がないから。それに比べて鐘の音は、なんだか不気味で、圧を感じるでしょう?昔はアナウンスだったけれど、子供たちはみんな無視してそのまま遊び続けてしまって、多くの子供たちが犠牲になる事件が起きたの。だから鐘の音に変えたのよ」
「…!こわい…!」
「そう。とっても怖いの。だからあなたに、鐘の音が鳴ったらすぐに帰ってきてって言ったのよ。この約束は、大人になるまでずっと守り続けてね。」
「うん……」

僕は風呂に入ってご飯を食べたあと、すぐさまベッドに潜り込んだ。○○ちゃんは結局なんだったのか。どうして僕が"バケモノ"と言ったら立ち尽くして消えてしまったのか。また新たな謎に包まれながら、僕は夢の世界へと入りこんでいった…