自分の選択した道を悔やみ続ける。
他人に対して劣等感を抱き続ける。
迫り来る試練に対し焦燥感で胸がいっぱいになる。
そう、それでいい。
人を下に見たら、自分というものはなくなるから。
人より上に立ってしまうと、自分を過剰評価してしまうから。
だから、全てが決まるあの日までは、
自己評価は低いままでいい。
‥なんて、強がったって、ただ辛いだけだ。
私は、ただの凡人にすぎないのだろう。
今までの栄光なんて、盾にすらならない。
一つだけ確信していることがある。
人生ほど、ワクワクする冒険物語はない、と。
ネタバレを見ることもできず、主人公である自分の選択で全てが変わる。
辛いことも、苦しいことも沢山あるけれど、
それを超えるワクワクが、人生にはある。
私はひとつの物語の主人公なんだと思って生きている。
私はこれから一生をかけて、この物語を描いていくのだ。
春は、出会いの季節だ。
部活には新たな後輩が入ってきたり、新しいクラスになって、新しい友達ができたり、、。
出会いの数が一番多い季節だ。
春は、別れの季節だ。
卒業する三年生、転校する友達、違う学校へ行く先生‥。
私も今年の春は、一番信頼していた国語の先生との別れがあった。
でも、その先生を一番信頼していると気づいたのは、別れの時だった。
いつもいるから、その大切さに気づけなかった。
その信頼に、感謝に、気づけなかった。
先生は、前に私に言った。
「〇〇(私)さんの文章が好き。」
先生にとっては、何気ない一言だったのかもしれない。
でも私は、そう言われたことが、すごくすごく嬉しかった。
私の唯一の特技である文章を褒めてもらえたのは初めてだったから。
もう、会うことはないけれど、私は絶対忘れない。
一番身近で一番信頼していた先生。
人生はやっぱり、一期一会だった。
出会いに感謝して毎日を過ごさなければならなかった。
私は先生から最後、出会いを大切にしなければならない理由を学んだのだ。
エイプリルフールになると、やはり何か嘘をつきたくなる。
なので私は、天然で騙されやすい友達のSにちょっとした嘘をつこうと、話しかけた。
Sは今日もおっちょこちょいで、靴を置く場所を間違えたり、友達だと思って話しかけた人が違う人だったり‥‥
これはいけると思って、何か嘘をつこうと思った。
だが、Sが言った。
今日、私の誕生日なんだよね
私はびっくりした。Sって4月生まれだったのか‥?
そうかそうかと私は言い、適当に持っていた飴をあげた。
するとSはニヤリと笑って言った。
まあ、嘘なんだけどね♪
私はまんまとしてやられたと、思わず笑った。
どうやらSはこの手口で約20人の人からチョコやグミなどをもらっているらしい。
しょうもないが、こちらが考え事をしている時にいきなり誕生日だと言われると、困惑してしまうということを、Sなりにしっかり考えて行動したのだろうか。
私は人を下に見ることの愚かさを、改めて知った。
Sは飴を口に入れ、すぐに砕いた。
今日も、昨日と同じような一日を送る。
昨日も、一昨日と同じような一日を送った。
でも、その日常がいちばんの宝物。
仲間と切磋琢磨し、ときには喧嘩し、音楽をやめようと思うときもあった。
でも、この仲間と奏でるのは、今年で最後だと思うと、不思議な気持ちになる。
ホールに響いた音は、いつかは終わってしまうけど、
私の音楽は、まだまだ続く。