届かぬ想い
顔を上げ右腕を高く垂直に伸ばす
・・・1・・・2・・・3
つま先立ちでさらに頑張る
・・・・4・・・・4
これ以上は無理だった
エレベーターの行き先は4階止まり
我が家のフロアは6階だ
届かぬ想いを未来に託す
神様へ
ペコペコッ パンパンッ ペコッ
(-人-)
―――・・・
『おうおう、年明け早々あんさんの所は繁盛しとるねぇ』
「おかげさまで、ひっきりなしに願いが届きますよ」
『でかいところは大変だねぇ、うちみたいにこぢんまりしてるとゆっくり出来るよ』
「まあもうこれは仕方ないで割り切るしかないと思ってます」
『それもそうだな、ガハハ』
「それにしても願う時はせめて名乗って欲しいって思いませんか?お願いされても名無しじゃ、願いを聞き届けてあげることも出来ませんよ」
『確かにウチも昔は名無しの権兵衛が多かったなぁ、でも近所の住民くらいしか集まって来ないからよぉ、現在じゃ大体が顔馴染みよ』
「良いですね羨ましいです。ウチの所はテレビとか雑誌でよく取り上げられるみたいで、新参の方ばかりですよ」
『ハハ自慢かい、苦労が絶えないねぇ』
「そんなつもりは。あ、苦労で思い出しました、神様って都合よく使われてる気がしませんか?」
『なんでまた』
「お願いされること自体は悪い気しないですけど、困ったときに何でもかんでも"神頼み"はやめて欲しいなと思いまして。ダメだった時には"神様のバカヤロー"とか"神様なんて居なかった"とか、いつの間にかこちら側が悪者にされてるのは不条理だなと」
『神様が不条理発言とは何とも愉快だねぇ』
「確かに力及ばずで願いを聞き届けられないこともありますけど、こちらも誠心誠意努めさせて頂いてるうえ、神に頼らざるを得なかった自分自身も反省するべき部分が無かったかを今一度振り返って頂きたいと切に願っているわけでありまして」
『熱くなってきたねぇ、長くなる?』
「"神頼み"する人はまだ良い方かも知れないです。中には願いすらしていないのに、"俺は神に見放されてるんだー"とか平気に言う人も居てですね・・・。こちらとて寝耳に水状態です、おたくどちら様ですか状態です。見放したくて見放してる訳じゃないんですよ」
『溜まってるなぁ。要するにだ、もう少し優しくしてよってことね』
「・・・ぐすん」
『オレは感謝しとるぞ、なんやかんやこうやってオレの相手してくれるしな!まあ、酒も奉納されたことだし、今日くらいはぱーっと飲もうや』
「同業者の感謝はあまり嬉しくないですけど、もぉ飲むぞー!」
『何だとこのやろー、ガハハ』
―――・・・
(-.-)ノ[凶]
・・・神様のばか
快晴
―――ミーンミンミンミンミン
空は雲一つ無き快晴
うだるような暑さとセミの大合唱
墓前に花を供える
祖父と祖母が眠る
墓誌には平成と令和
奇しくも今日は二人の命日
この時ばかりは心安らかに掌を合わせる
遠くの空へ
遠くの空へ想いを馳せて
白の巨躯は打ち上げられた
歓声があがる合間もなく
5秒で木っ端微塵になった
失敗は成功の母と言う
苦難を越えて頑張れカイロス
言葉にできない
息を呑むほどの絶景だったり
圧倒的な美味しさだったり
唖然とするほど呆れ返ったり
俗に言うところの言葉にできないシチュエーションはまま挙げられる
それとは方向性が違って
映画を観てもこれといった感想が出てこない
世間話をしてても返答が浮かばない
会議で話を振られても意見すら浮かばない
口下手の前に何かが欠如しているような言葉にできないシチュエーションが私にはよくある
生まれつきの性格なのか
外的要因があったかは思い出せないが
昔から人前で話をするのが苦手で嫌いだった
それでも想いを言語化してアウトプットするプロセスはもっと磨いておくべきだったなと今なら思う