#03自転車に乗って
「ただいま」
学校が終わって家に帰ってきた。
来年から就職活動が始まる。
また先生と進路について面談をした。
別にやりたいことも見つからない、
ただただ平和に学生生活を送れればそれで良かった。
毎日自転車で家と学校とを往復しているだけの日々。
こうした日々の中でふと思うことがある。
「子供の頃に思い描いた大人になれるのだろうか」
ふと感傷に浸りたくなり、
おもむろに押し入れのアルバムを探し始めた。
ペラペラと思い出を振り返っていると
1枚の写真が目に止まった。
「自転車だ」
3歳の時にお父さんにねだって誕生日に買ってもらった青くて雷みたいなカッコイイ自転車。
何故か帽子をかぶって敬礼をしている自分がいる。
思い出した。
小さい頃に迷子になった事があって、その時白バイに乗った警察官が助けてくれたんだ。
それで警察官に憧れて……
その時僕の心の奥底で止まっていた何かが
走り始めた。
しぐれ
#02 心の健康
あの時どうすれば良かったのかな。
そう思いながらいつものあぜ道を
自転車に乗ってゆっくりと帰っていた。
肌を焼くような日差しも落ち着いて、青い空が茜色に染っていくヒグラシの鳴く時間。
友達と道中で別れ、
1人になるといつもこんな事を考えてしまう。
自分の好きなものを隠して、友達の話に合わせていた毎日。
本音を隠して演じ切った今日1日。
「やりきったぁ〜」
そうやってまた自分に言い聞かせる。
なんだろう。この気持ち。
胸の奥に何かが引っかかっていた。
なんとも言い難いこのコトバ。
「……楽しくない」
そうだ。楽しくないんだ。
毎日、自分を守るために「私」という誰かを演じて
本当に話したいこと、やりたい事がわからなかった。
だから自分を見失っていたのかな。
誰かを演じるのはもうやめよう。
自分の心に従って自分らしく生きていこう。
しぐれ
#01 君の奏でる音楽
君はいつも笑顔を絶やさない
君の笑顔は皆を笑顔にしてくれた。
嬉しい時も悲しい時も辛い時も
毎日笑顔で過ごしていた。
「何がそんなに嬉しいの?」
僕は聞いてみた。
そしたら君は
「笑顔でいればきっと大丈夫だから」
僕には理解できなかった。
ある日君は学校に来なくなった。
ずっと来なかった。
数日後、先生が言った。
「○○さんは心臓の病気で入院しています。皆さんで千羽鶴を折って回復をお祈りしましょう……」
そうか、誰も不安にさせない為に笑顔でいてくれたんだな。
数ヶ月後、先生から言い渡された言葉は嬉しいものでは無かった。
それでも、君の奏でる音楽で皆を笑顔にさせたんだ。
最高の音楽をありがとう。
しぐれ