やさしくしないで
私に笑いかけないで。
私と話さないで。
私と目を合わせないで。
貴方に彼女がいると分かっているのに、
好きになってしまった。
でも、この想いは止められなくて、
ずっと苦しい。
それなのに貴方は私の気持ちなんて知らずに私に話しかける。
『あれ?お前今日部活は?』
最初は「さん」呼びだったのに。
いつから「お前」とか呼び捨てになったんだろう。
下校中、私の少し前を歩いていた貴方。
友達と話していたのに、
私に気づくとわざわざ話しかけてくる。
なんで?
今まで私に話しかけてくる男子なんていなかった。
貴方が初めてで、どう接していいのかも分からない。
話しかけてくれたのがやっぱり嬉しくて、
でも、苦しくて、
逃げるように早歩きで駅に向かった。
それ以来、まともに話していない。
うん、それでいいんだ。
それで、貴方への気持ちが少しでも薄れるなら。
───ねぇ、これ以上私にやさしくしないで。
バイバイ
あと何回君に「ありがとう」が言えるだろう。
あと何回君に「ありがとう」と言われるだろう。
「ごめんね」も「ありがとう」も「またね」もいつか言えなくなる日が来るのかな。
一緒に笑い合うことすらなくなるのかな。
卒業したら会うことなんてなくなるもんね。
残り何日あるんだろう。
後悔しないように、
残りの日数分だけ全部君に伝えるよ。
ありがとう
ごめんね
またね
バイバイ
旅の途中
私たちにはまだ、
知らない世界がある。
そう、
旅の途中だ。
受験の日、君は私の隣に座っていたね。
名前もどこ中なのかも知らない。
でも、
入学式の日、教室に入ると君がいた。
仮入部の日、君がいた。
なんかね、運命感じたよ。
今は、タメ口で話す仲。
なんなら「お前」ってたまに言うよね。
ちょっとムカつくけど、
あのときは知らなかったんだもんね。
君のこと。
まさか、好きになるなんて思いもしなかった。
─────まだ知らない君
やさしい嘘
おっそい…
待ち合わせ時間15分過ぎてる!
まだかなぁ…
「ごめん!道迷っちゃって」
『全然待ってないよ!むしろ私も遅れちゃって今来たところ』
道に迷ったなんて絶対嘘
だって私たちが付き合う前から待ち合わせにしてる場所だよ?
10回以上来てるのに…
そもそもこの場所提案したのあんたでしょ?
でも、
嘘をついてしまう私もどうかしてる
今日もどうせ寝坊でしょ
こんなの、あなたのためにならないのに
どうしても繕ってしまう
───────やさしい嘘で