君と最後に会った日
あの日は。
ごく普通の日だった。
特に大きな事件もなく、
暑くもなく寒くもなく、
雨も降っていなかった。
ただ、あの日。
私と君は、激しい口論になった。
今迄、君と喧嘩した事は、
無かった訳じゃない。
だから。今回も。
直ぐに仲直り出来るだろう。
…って、思ってた。
だけど。
そのまま、君は私の元を去った。
そして、二度と、
私の元に、戻っては来なかった。
淡々と続く日常の、
何でもない一日になる筈だったのに。
あの日は、
恋人だった君と最後に会った日。
…になってしまったんだ。
繊細な花
綺麗な花を咲かせる。
…という事は、
恐ろしく手間が掛かる。
取り敢えず、苗を庭に植えて、
毎日、水をやってれば済む、
なんて考えは、甘すぎる。
その花の性質を学び、
剪定、病気の予防、害虫駆除など、
様子を見ながら、様々な世話をし、
最適な量の肥料や水を与える。
相当な労力。そして、幸運に恵まれて、
繊細な花は、その美しい姿を見せてくれる。
そんな、繊細な花を育てるなど、
俺には、とても出来はしないが。
それでも。
お前という、繊細な花を守る事なら、
少しだけ自信がある。
だから…。
偶には、素直に弱音を吐いてくれ。
俺が、何とかしてやる。
1年後
梅雨の合間の晴れた日。
まるで夏みたいに、
太陽がキラキラ輝いてた。
綺麗な青空、白い雲。
降り注ぐ太陽の光。
普通の人はきっと、
こんな日は『良い天気』って
言うんだろうな。
だけど。ボクは。
太陽の光に負けてしまうから、
窓から恨めしく青空を眺めてるだけ。
1年後には。
ボクの病気が良くなって、
太陽の下でも元気に過ごす事が、
出来る様になってるかも。
でも。
1年後には。
ボクの病気は悪くなって、
起き上がるのも辛くなって、
ずっとベッドで寝ているかも。
長いようで短い1年後。
ボクは…。
子供の頃は
子供の頃は、
貴方が好きだよ、と、
あんなに素直に言えたのに。
内気で弱虫な私を手を、
何時でも引いてくれていた貴方は、
ずっと私の憧れでした。
でも、大人になると、
本当の気持ちを、
はっきりと言えなくて。
貴方は変わらず私に、
笑顔を向けてくれたのに、
私は頬を染めて俯くばかり。
子供の頃は言えた言葉を、
大人になってから、
改めて貴方に伝えたくて。
でも、言えなくて。
もしも。貴方が昔と変わらず、
私に微笑みかけてくれるなら、
私は、貴方に伝えましょう。
今でも変わらず、貴方が好きですよ、と。
日常
朝起きて、身支度を整え、
皆に挨拶して、朝御飯を食べる。
仕事をして、昼御飯を食べて、
また仕事をして。
仕事が終わり、束の間の自由時間。
晩御飯を食べ、入浴し、
寝支度を整え、眠りに就く。
繰り返される、何気ない日常。
貴方が生きている時から、
代わり映えのない、日々の生活。
貴方が俺の側に居たときは、
単調な日常も、楽しかったのに。
貴方が居なくなっただけで、
こんなにも、色褪せてしまうなんて。
貴方がいる頃には、想像出来なかった。
大切な人が居てくれるから、
日常は愛おしいのだと、
貴方を亡くしてから気付くなんて、
俺はなんて、愚かだったのだろう。