お題:どうして
『与えられたもの、失くしたもの』
ねぇ、何がダメだったの?
ねぇ、何が好きだったの?
そんな事を聞いてでも
必死に会話をしようとして
でも、こっちを見向きもせずに
大切なものは背を向けて去って行く
与えられたこの場所で
咲けなかった私が悪いの?
日向に行って光を浴びて
大きく育ったあの人がいいの?
なりたくてなったわけじゃない、なんて
言い訳でしかないのに
そんな言葉が頭を巡る
どうして?どうして?を繰り返して
繰り返すことに疲れていた
だから、日陰にいる私に
気づいてくれたあなたが光に見えた
でも、今ならわかる気がした
あの時の私はどうして?と悩んで苦しんで
そして少しずつ自分を変えていった
そんなきっかけをくれたあなたに
どうして?ではなくありがとう!を届けたい
ねぇ、あなたのおかげで
私は新しい場所で頑張れてる
ねぇ、あなたは今もどこかで笑ってるかな
そして、私みたいな誰かを救ってるのかな
お題:夢を見てたい
『舞踏会』
昔読んだ物語の
1番好きな場面はどこ?
そんな話を不意に振られた
幼なじみとのふとした会話
私の好きな昔話
題名は覚えていないけれど
確か煌びやかな場所で
舞踏会が開かれてた
子供心にはとても眩しく
大人になっては笑い話
素敵な場面だね、と微笑んだ
その眩しさには勝てないなんて
キザな事を思ったけど
口には出さず留めたままで
あなたとの舞踏会なら
今すぐにでもできそうなのに
追いかける度に逃げていく
あなたがシンデレラなら
魔法が解けるその前に
私と素敵なひとときを
いえ、ダメね、だってあなたにはいるのだから
共に幸せになるべき人が
あなたの幸せを祝えるなら
私はあなたの幼なじみのままでいい
そう言って私はただ静かに
震えるあなたの手を離した
お題:ずっとこのまま
『夜明け前』
このまま朝が来ないなら
明日なんて来ないなら
笑いあったあの日のまま
時が止まっていたら、なんて
どうしようもない妄想と
たったひとつの叶わぬ望みが
跡形もなくこぼれ落ちた
まだ薄暗い部屋の片隅
あなたを想い泣く私に
透明なあなたは見えないから
まだ暗い私の周りを
明るく照らす燈に気づかないまま
今日もまた変わらない
朝を告げる無機質な音が
私を現実に引き戻すのだ
お題:紅茶の香り
『至福のひととき』
高貴な香り
静かな部屋
かすかに聞こえる鳥の囀り
穏やかに流れる時の中で
ぺらぺらとページを進めてゆく
誰にも邪魔されることのない
私だけの世界
様々な情景の中に身を委ねて
静かに本を楽しむ時間
そのお供にはいつもの
甘い時を経て苦みを持つ
とっておきのその香りを
できることなら他でもない
私の愛するあなたから
私に注いでくれませんか
この至福のひとときが
さらに良いものとなるように
お題:巡り会えたら
『想い出』
めでたしめでたしで終わる物語の
その先を知りたいと言う私に
人はやがて愛する人の思い出の中で
生きるようになるのだと
母はいつも言っていた
その言葉の意味なんて
幼い私は知らなかったけれど
ただ、ふぅんと聞いていて
その時がきて知る悲しみも
その時に気づく胸の痛みも
全部伝えられないのだと
遅すぎる程の後悔をした
いつか時が巡って
あの日々でまた会えるのなら
母が話してくれた物語の
その先を知りたいなんて言わないから
あの時の懐かしい思い出を
笑って語り合えるように
それまではただ静かに
想い出の中で会っていたい