よく夜の海を見る。
ただぼーっとして、星を見ながら悲しみに浸る。
そんな時間が好きだ。
ただ真っ黒な海と無数に広がる星空、波の音。
悲しみに寄り添ってくれてる感じがする。
少しだけ楽になったかな。
帰るか。
あいつが太陽だったとしたら、おれは誰にも知られないような小さい星なんだろうな。
あいつの目が覚めるまでの時間。
目覚めの悪いあいつのために、朝食を作る。
まずはとびっきり濃くて苦いコーヒー。
丁寧に一から、あいつのために。
そして食パンをトースターに入れる。
音が鳴って、こんがりと焼けたパンが出てくる。
バターを塗った、あいつの好きなシンプルなトースト。
みずみずしい旬のトマト。
きれいな緑色のレタス。
色鮮やかなハム。
全部食べやすいように皿に盛り付けたら、サラダは完成。
いい出来栄えだ。
「おい、朝だぞ。朝飯出来てるから来いよ。」
最後にこいつを起こして、俺の朝の日課は終わり。
全く、世話が焼けるな。
病室から見える花火。
去年とは違って、なんだか悲しくて、胸が苦しい。
去年、君と見た時、
「もう私とは見れないと思った方がいいよ。」
そんなふうに言ってしまった。
余命3ヶ月。
突然逝ってしまうより、きっとマシだと思ってた。
それで、君は悲しそうな顔で言ったんだ。
「どんな理由があっても、そんなこと言わないで。
来年も絶対見れるよ、ね?」
その2日後、君は突然旅立ってしまった。
私が余命宣告されたことも、お別れも言えず。
結局1年経っても君の元へは行けなかった。
ねぇ、来年は2人で見られるかな。
空から花火見てみたいな。
来年の花火はきっと、今年よりきれいだから。
もうずっと雨が続いてる。
雨の音をBGMに寝転がるのも、すでに飽きていた。
スマホを開くと、朝の4時だった。
もうそんな時間か、そうか。
天気予報では今日は雨。
明日は晴れるらしい。明日、か。
私は、天気予報が外れることがあるように、“明日”が100%来るなんて思えない。
もしも明日が晴れなら、少しだけ明日が来ることを信じてみようか。
なーんて、明日が来るかなんて知らないけど。