🌿‬

Open App
7/23/2024, 11:43:17 AM

芽吹き、眠りの静寂を破る微動

蕾、喜びの爆弾を蓄えた子供

開花、猛き生命の艶やかな踊り

散り際、儚くも美しい最期の煌めき

実り、巡り巡る土に還る


色褪せた花弁を飲む
茎の棘が喉を刺す
血濡れた種は土を拒む
芽を踏まれ、根を抜かれ
やがて砂利を貪り食う

比べることしか出来なかった
萎びた花は忘れて欲しい
貴方の開花を待つ人は
私の芽を踏み根を抜くの

隣の花は赤くて
隣の芝は青くて
砂利で生きることは叶わなくて
実を結ばぬ私は徒花



#花咲いて

7/22/2024, 10:44:06 AM

引き出しを開けたら、
青い猫が出てきたらいいのにねって
なんでもできるポケットで、
夢を叶えてくれたらいいのにねって
いつも言っていたよね

私はまだ子どもだったの
青い猫を信じたほど
過去は変えられると信じたほど
私もお星様になったら、
ずっと一緒だと信じたほど

空の瞬きに祈っても
時空の歪みに消されてしまう
過去など変えられないの
神様でさえ時間の奴隷
廻り続ける精美な歯車

神様が許さなくても
お星様にはなれるでしょ
一度だけ罪を犯します
泥にまみれて探し続けた
あの鈴の半分を、歯車に噛ませるの

からまわる、からまわる、からまわる

神様は怒る
でもそれでいいの
私たち、タイムパラドックスに消えていく
手を取り合って、時空乱流の中で
鈴の半分を二人で握るの

青い猫はきっといる
私たち、ずっと子どもだもの



#もしもタイムマシンがあったなら

7/19/2024, 1:08:19 PM

その水晶体が映す景色を
その硝子が結ぶ像を
その涙に反射する私を

淡い茶色の虹彩で
深い黒の瞳孔で
睫毛に触れる程近く
瞼の震えさえ感じる程近く、近く

私の涙腺を壊して
私の角膜に傷を付けて

もしも私が盲点にいるなら
視神経までを指に絡めて
脳を犯して狂わせて
貴方の網膜はもう私のもの

よどみない貴方の瞳の中
視線の先には、
私の涙に反射する貴方がいて。



#視線の先には

7/18/2024, 11:17:51 AM

私だけの幸せ
本をめくるときの紙の匂い
私だけの喜び
久しぶりに見ても散っていない花
私だけのときめき
街角で目が合うぬいぐるみ
私だけのドキドキ
車と先を譲り合う曲がり角
私だけのモヤモヤ
四隅まで裂いた飴の袋
私だけの悲しみ
カメラを構えると逃げる野良猫
私だけの憂鬱
傘をさすか迷う小雨
私だけの寂しさ
夕方のチャイムを届ける風

私だけの秘密
きっとどこかの誰かもそうだよと笑う貴方

私だけの貴方
どこかの誰かを知らなかった私に
世界は広いと教えてくれた人



#私だけ

7/15/2024, 10:47:23 AM

今日は海の日

うららかな夏の日だった
髪を乱す風が心地良かった
身体は透明に染められた
このまま私の何もかもを
吹き飛ばして、攫っていってよ

鳥になって高く飛翔する
縛られない自由を夢見る
風をとらえた翼をはためかせる
髪を解きたくなったの
なびく黒に櫛はいらない

人魚姫は、泡になって消えるんだっけ
最後は、風の精になるんだっけ
生まれ変わったら人魚になりたいと思っていた
そんな頃もあったな
私は泳ぐのが下手だった

泡沫に溶けたかった
潮が出迎えてくれた
口をひらけば涙の味
きっとたくさんの人が
ここで泣いたのね
遠くなる水面に射し込んでくる
暑い暑い夏の光が
人生で一番美しい景色だった

今日は、海の日。



#終わりにしよう

Next