「私の名前」はどこにでもある平凡な名前だ…
だから、本音は可愛い名前が欲しかった
ずっと昔、「私の名前の意味は?」と
両親に尋ねた事がある…
「おまえの名前は親戚のオジサンが考えたんだ」
えっ?……親戚のオジサン?
そのオジサンの事はよく知っていた
ハンサムで優しく賢い人だった…
「あ〜…あの人か」と思ったが
親じゃないんだ…とも感じた記憶がある。
両親は、3つの名前を考えてきたオジと
どれにしようか考えたようだ…
そして、今の私の名前に決めた決定打は
「おまえの名前は畳の上で死ねるんだよ」
と、自信満々で答えてくれた…
当時は、生まれたばかりの子に
「死ぬ」ってと思ったが、段々と年齢を
重ねて長い人生の流れも理解出来ると
「畳の上で死ねる」その言葉には大きな愛があったんだとわかるようになった…
家族に囲まれ穏やかに人生が終わるなら
こんなに幸せな一生はない…
両親とオジの深い考えをくみ取れる位に
私も成長出来たのかもしれない…
夏野菜の植え付けが終わり
しばらくたった頃、小さな双葉が畑の片隅に芽を出した…
「草?野菜?いったい君は何?」と
私は、弱々しい苗に語りかけた…
しばらくそのままにし、時々眺めていたが何だかよくわからない「小さな苗」を
ちゃんと育ててみようかと、素焼きの鉢に
植え替えてお世話をする事にした…
しばらくして双葉から本葉が伸び始めた
「君は、きゅうり?かぼちゃ?スイカ?」
確かにこの3種の中のどれかだと答えが見えてきた…
毎日少しずつ成長し正体がハッキリした
「君はスイカだったんだね〜」
このスイカが芽を出した流れはこうだ…
昨年夏、スイカの残骸をコンポストに投下
どんどん残飯を投げ込み堆肥に変化させ
夏野菜の畑に投入…
この時点でバクテリアに分解されてしまい
土になっているはずが…
何故か一粒の種が生き残り芽を出した…
私はこの奇跡の苗に「ド根性スイカちゃん」と命名をした。
鉢のままでは大きくなれないとわかり
今度は畑に2度目のお引越し…
それから、大事に大事に育ててきた
現在、「視線の先には」20センチ超えの
スイカが2つスクスクと育っている
ド根性スイカちゃんは、ド根性で生き残り
ド根性で実をつけた…
「君は何?」から始まった生命力の
塊は奇跡のスイカに成長した
私は、「私だけ」の人生を生きている
………と、思い込んでいた若い頃
今は、私だけの人生なんてないと
色々学んで心底納得させられている
私の娘はいわゆるバツイチってやつで…
一応…娘の名誉の為に付け加えておくが
事故で言うなら、後ろからいきなり
オカマをされたような案件な訳だが…
ここで、私は現実の生活において
娘の人生の巻き込み事故にあっていると
思っている…
そして、家族を増やして帰ってきたので
当然、その子たちにも手間も時間も費やさなければならない…
これは、体にムチ打ってやっているって
事で、やはり巻き込み事故の余波である。
こうやって冷静に考えると、皆まわりに
相当な援助や迷惑や時間まで貰いながら
やっと何とか日々を生きている…
だから、大変な時ほどまわりをよく見て
「ありがとう」を忘れず生きなければならない…
1日がものすごく早い…
口癖のように「1日が30時間あれば
自由な時間が出来るのに…」
そんな言葉を繰り返しながら
日々は目まぐるしく移り変わっていく…
「一難去ってまた一難」
この言葉もしかり…本当に次から次へと
心配事は湧き出てきて私を悩ませる…
「遠い日の記憶」とは、人生が一段落し
縁側でお茶でも飲みながら
「大変な事ばっかりだったけど頑張ったね〜」なんて言いつつ、人生を振り返り
反省とねぎらいを込めた言葉とセット
なんじゃないか…そんな気がする
だから、毎日悩んだり、心配したり
「30時間欲しい!」なんて余裕がない言葉
を発しているうちは使わない方が賢明だ
父は70代で急死し他界したのだが
その時に、いくつか不思議な体験をした
最初の不思議体験は遺影…
僧侶が御経を言わんとしたその時…
私がふと遺影に目をやると、父の顔が
百面相のように変化した…
人には心眼という第3の目があると聞くが
自分の見えている事が理解出来ず何度も
目を閉じたりこすったりしたが遺影の表情はしばらく変わり続けた…
その次は四十九日法要の朝、夢枕に立った
義理固い父は、自分の満中陰志のお返しを
ちゃんとしたかと私に尋ねてきた…
そして、私にこう言った…
「人様がしてくれる事を当たり前に思うな恩は忘れず必ず返せよ」と…そして去り際
に少し強い口調で「わかったか!」と…
言い残せなかった言葉をちゃんと私に伝えにきたようだ…
父の納骨は、クリスマスイブの日だった
一連の法要が終わり歩いて帰る道すがら
北の空に鮮やかに虹がかかった…
「じいちゃん、虹までかけたね〜!」と
皆が一瞬で笑顔になり笑った…
何から何まで父は粋な事をするもんだ
「空を見上げて心にうかんだ事」と聞かれたら、私は真冬にかかるこの虹を生涯忘れる事はない…