8月、お兄さんに会いたい
お兄さんは駄菓子屋で、チューチューアイスを1人で食べていた。
お兄さんと言っても、そんなに歳が離れていたわけではない。
たしか僕が小学4年生で、お兄さんが中学生1年生だったと思う。
物欲しそうに見つめる僕に、お兄さんはアイスをわけてくれた。
錆びれたベンチに座って、他愛のない会話を楽しんだ。
時間の流れはあっという間で、お兄さんとのお別れは早かった…
「将来お兄さんと結婚する！」
「ははっ、俺よりでっかくなったらな。」
…あの時、お兄さんは冗談と思ってたんでしょ？
僕、本気だからね。
お兄さんのつむじが見えるくらい大きくなったんだ…
結婚してもらうよ。

あつい…いたい
目の前に、好きな人がいる。
鼓動が熱くなるのを感じる…いや、自分の体が燃えてるんだわ！！
あつい、いたい！
熱い！痛い！
いやっ、皮膚がだんだんただれていく…
こんなんじゃ、彼は私のことを愛してくれないわ。
熱い、痛い。
どうしてこんなことになったの…？
ただ私は、好きな人に振り向いて欲しかっただけなのに！
あの女さえ、いなければ良かったのにぃ！！

彼氏に振られた。
頭が真っ白になって、気がついた時には家でお酒を飲んでいた。
友達は私の話を真剣に聞いてくれた。

…嬉しかった。

ひとしきり話して、泣いて。
気持ちが落ち着いてきた頃に、友達はこう言った。

「私なら、■■■ちゃんをこんな顔にさせないのに…」　

冗談だと思えないほど真っ直ぐな瞳をしていた。
涙の跡が気にならないほど、頬が熱くなるのを感じた。

''もしも過去に行けるなら、どうしたい？''
夕焼けの綺麗なある日
見知らぬ老人にそう言われた。
老人の身なりは綺麗とは言えず、いかにも怪しい人だったが、気になった俺は老人の話を聞くことにした。
老人が言うには、人は誰しも過去に何かしら後悔がある。
それを、自分はなくしてあげたい。自分には、過去に相手を送れる力がある。と、いう話だった。
胡散臭い話で、誰も老人の話を信じないだろうと思うだろうが、俺は違う…
老人が言うように、俺は過去に戻りたいと強く願うほどの出来事があった。
気がつくと俺は、過去に戻っていた。
頭が酷く痛む。
視界がはっきりするまで時間がかかったが、目の前には、1年前になくなった母の姿があった。
（母さん、ごめんなさい。俺が悪かった、いつもありがと　　　う。）
その日、俺は母と喧嘩をした。
ムキになってしまって、謝ることできなかった。
母はその日、事故で亡くなった…
結末は変わらなくても、この言葉を言えただけで俺は満足だ。
（老人、いや未来の俺、ありがとうな。）

またいつか
あの人に会いたい…
名前も教えず、あなたの元を去ってしまった私を許してください。
私はずっとあなたのことを想っています。
足音のない、客人を待っているこのときも…
私は、何十年も共にした旦那より、あなたのことを想いで胸がいっぱいです。
あの時、病室で話した自作の物語の続きをしましょう。
話したいことがたくさんあるのです。

目を閉じたはずなのに、あの時と変わらない姿のあなたがいました。
（久しぶり！！）
そして、幼い頃の姿の私は、彼にそう言いました。