彼女がいなくなって、何ヶ月が経ったのだろうか。
どれだけ経ったとしても、僕の心に空いた穴が塞がることは決してないのだろう…
余命宣告されてから、時間が経つのはとても早かった。
彼女が亡くなった今、時間が経つのはとても遅く感じる。
色違いのこのマグカップも、どのくらい時間が経てば捨てる決心がつくのかは、今の僕にはわからない…
ただ今は、亡くなった彼女の面影を感じてたい。
(もし私が、本命にしてほしいって言ったらどうする?)
彼女にそう言われた。
正直、彼女とは体の関係だけで満足できていたし、本命にすることもないし、する気もない。
だって、この関係の方が彼女の心を縛りつけれるじゃん?
本命にはなれないもどかしさと、虚しさが彼女の心を支配する。…そんなの良すぎんじゃん?
どれだけ彼女にせがまれてもその想いには応えてあげないから笑
澄んだ青空、いつもと変わらない屋上からの景色が今日は少し違う。
いつもは空を見上げているけど、今日は逆に屋上から下を見ている。
今から、地面に赤い花を咲かせようと思う。
周りの人々は、私を見上げている。その中には必死に止めようとする人もいる。その中には彼女もいた。
他の人よりも顔色が死人のように青い彼女…
私は、彼女にこのメロディを贈ろうと思う。
一生で一度のこのメロディ、このメロディを一生脳内に残してリピートしてね…君だけのメロディだよ
パラパラ、ポタポタ、ザーザー
いろんな雨音がある。
とても綺麗な表現で、雨音はときに楽器のような音色を奏でることもあるだろな。
だけど、私にとって雨音は不安を駆り立てるものだった。
小さい頃、私は俗に言うネグレクトで、毎晩家から追い出され、ほとんどを公園で過ごしていた。
雨が降ると周りが暗いのもあってか、自分の存在を否定されているみたいでとても怖かった。
でも、今は怖くない…
雨に濡れているのに、身体が温かく気持ちがいい。
今まで、怖かった雨音に包まれているような感じがする。
そう言えば、昔相手したおじさんが言ってたな…人は死ぬとき気持ちがよくなるって、もしかしたら私は死んじゃうのかもしれない。でも、それでもいい。
だってこの辛い人生から、逃げられるから…
私は自分で言うのもなんだけど、例えるなら天然の宝石のように美しい。そんな私とは対照的に、同じクラスのAちゃんは、運動もできないし頭もよくない見た目もよくない…私なら生まれてきたことを後悔するレベルの子だ。
そんなAちゃんはいつもクラスで虐められている。
ある日、Aちゃんの鼻水が私の手についた。
Aちゃんの顔を覗いたとき、私は息を呑んだ。
美しい、と思ったんだ。
涙と鼻水でぐちゃぐちゃになった顔、殴られ蹴られボサボサになった髪の毛。すべてが、美しかった…
あぁ、美しい…
この美を壊さないよう、これからも駄目な女の子を演じてもらわないと。
この、宝石は私だけが見つけられればいいから…