過去に老人と会った場所を探してみる。
しかし、見つける事は出来ない。
それはそうだ。そもそも噂であり、
実在するのか分からないのだから。
だが彼はそんな僅かな希望だとしても、
その希望に縋るしかなかった。
その老人を探す事が今の自分がやるべき事。
そんな風に思える事が、彼の中では大きな
変化であった。
まるで、「一緒に踊りませんか?」
と言われているような感覚になっていた。
1日探してみて、結局見つからなかったが、
明日も探してみよう。
彼はそう思うのであった。
かつて、彼の住む街にはこんな噂があった。
予言者の老人がいる。
その老人に出会ってしまったら予言を聞かなければ
いけない。予言を聞けば自分の示す道が見つかる。
聞かなければ不幸になると。
彼はよく知らない老人に話しかけられていた。
その時は話し相手が欲しいのかなくらいにしか
考えてなく、適当に話していた。
もしその老人が噂の老人だったら。
もしそれがきっかけだったとしたら、
もしその噂が本当だとしたら。
そんな奇跡にまた巡り会えたら。
彼はすがるようにその老人を探しに行くのであった。
帰宅し今までの事を振り返ってみる。
今まで自分は何をしてきたのか、
何かやり遂げた事はないか。
ふと考えた時、彼はある事を思い出す。
その時は深く考えなかったが、
今思うと奇跡的な出来事が彼には起こっている。
あの奇跡をもう一度。
彼はそう思い、眠りにつくのであった。
翌日彼は行動に出る。
具体的な目標はないが、ただただ外の世界に
踏み出していく。一歩一歩何かを探すように
ただひたすら進んでいく。
辺りはもう黄昏時。
彼は何も見つけられなかった絶望感と共に、
一歩を踏み出せた勇気に少しの喜びを感じ、
帰路につく。
このままではきっと明日も
同じままだろう。
どこかで変えなければいけない。
自分の意思を、行動を。
そう心に決め、
彼は新たなスタートを決意したのである。