記憶の海は澱んでいる
底に沈んだ幾多のものがいつまでもそこにあるせいで

剥がれては浮き上がる小さい欠片
古い空気に含まれる消えない匂い

光を受けて輝いたのが
綺麗な貝殻なのか
汚い油の濁りなのかも
わからない

願いが1つ叶うならば
どうかもう眠らせてください
肺を潰す空気の重み
この世に満ちる全てから
解放を

✦︎

願いが1つ叶うならば
どうかあの人を生き返らせてください
声が聞きたい
その手に触れたい
悩み憂う貴方の　美しい横顔を
ずっと見ていたい

つまらないことでもとりあえずやってみよう！からだやてをうごかそう！いまはつまらないとおもっていてもいつかやくにたつかもしれない！つまらないことからでもまなんでやるぞというせいしんでいきていこう！そもそもよのなかにはつまらないことなんてないんだよ！じぶんがつまらなくしているだけ！つまらないとおもったらまけだ！なんでもたのしむきもちをもたなきゃ！

ソファでうたた寝している姿を見つけた。
近づいても起きる気配は無い。
膝の上には、読みかけの本が開かれたまま。

……生きてるよな？

胸が呼吸に上下しているのに、なぜか少し不安になる。
起こさないように慎重に隣へと座って、その寝顔を眺めた。
揺り起こすか、このまま帰るか、それとも居座って驚かすか。
どれが正解だろう。
いや、驚くとは限らない。
笑う、呆れられる、……嫌がられるのは困るな。

目が覚めるまでに、欲しい答えを考える。

蔦に守られた廃病院
枠だけの窓
腐ったカーテン
小さな病室
崩れたベッド
ぼろの寝具
割れた薬剤の瓶
優しい手
消毒の匂い
謝罪の言葉