暗い心をまるごと
サーっと覆い
潤わせ包み労わり癒せよ
通り雨のように
地を濡らし
爽やかな風をもたらせ
#通り雨
今年はじめての秋の風がふいた
身体から1センチ離れたところに
薄く透明な膜を張るように
秋風が今日の洋服になる
窓を開け放して
ぼうぼうと吹く風に
髪も心も飛ばして速度を上げる
高く澄んだ空の青はこれまで通ってきた秋の思い出を呼び起こす
あの秋もあの秋も。秋は
わたし
が
限りなく
わたし
に近い季節
わたし
が
わたし
に戻っていく季節
山々が次第に照れていく
#窓から見える景色
家のようにして遊んだ
ここがリビングここが寝室
ここはわたしの部屋ね
鉄が組み合わさった物体に
そんな想像を膨らませることのできる感性の柔らかさよ
あの頃はすべてが物語になった
捕まったらここに閉じ込めておくよ
すぐに出られないからぴったりじゃない
牢屋と化したそれも鉄の塊ではないなにか、
に成り果てた
私の生きているジャングルは
コンクリートで覆い尽くされる
コンクリートの中で役割を演じているのではないか
コンクリートの中から出られないよう、なにものかに捕まえられているだけではないのか
大地はちゃんと呼吸できているのだろうか
#ジャングルジム
誰の声を頼りにしたらいい
どんな言説を信じればいい
眠っている龍はいつ目覚める
ごうごうと吹き荒れる灰色の空の下で
荒波に乗ってやってきた尖った奴らがしぶきをあげる
助けてくれ助けてくれ
頼りにしてくれたらうれしい、と言った人は
もう頼るなといい
大切にしたいと思っていた信念は
余裕のなさとともに揺らぎ、掻き消えた
もう残るはわたしを呼び覚ますだけ
呼び覚ますだけ呼び覚ますだけ
なによりも大きく頼りになる声が言葉が愛が
ただただ出たがりで。
#声が聞こえる
◉今日の気づき
はなすことから、目を背けないでいようと思った
泣くのは簡単だ
泣いてわかってもらおうと思っていたけれど。
それは対話の放棄
これはもう恋じゃない
ひとりの人間をちゃんと好きで愛おしいと思いつづける
ための修行に等しい
心が暴れ出しそうになるとき
深く深呼吸をする
ちがうことに意識を飛ばす
そうして冷静な心と頭で向かい合う
ただそれだけだ
#秋恋