「もしどちらかを選べるのなら
未来に行きたいですか
過去にいきたいですか」
そんなありもしない2択を
誰しも考えたことがあるかもしれない
未来には希望のひびきがある
明るくて 今よりよいものが
待ち構えているような ときめき
過去には少し暗い陰がある
歴史に埋もれた 人びとの思いが
詰まっているような気がする
もしも未来を見れるのなら
もしも過去を見れるのなら
その方向性の違いの中に
人の性格の本質的なものがあると思う
#もしも未来を見れるのなら
「逃げちゃダメ」
わかりやすいものに
逃げちゃダメ
かんたんな方に
逃げちゃダメ
やさしいあなたの
その鋭さが耳に残っている
ぴしゃっと
山から一番に
湧き出た雪解け水を
かけられたよう
つらいときは
逃げてもいいんだ
とも聞いたことがあるよ
どちらがほんとうなんだろう
わたしが逃げたかったのは
何からだろう
つらい場所から逃げるのは
悪くない でも
わたしが逃げようと
思っていたのは
きっと わたし自身
わたしはわたしで
あり続ける
逃げちゃダメ
なのは
自分から逃げたい
と思う自分から
逃げるとは
自分の手綱を誰かに
明け渡すこと
脳みそを溶かして
多くに迎合すること
戦わなくていい
勝たなくてもいい
小鹿のように
ふるふると震える足で
立っていろ
#ここではない、どこかで
「日々」
あなたの日々という本、
ぱらぱらと軽快なリズムを刻む
よっこいしょと1日1日が重く、
今日を終えるのが精いっぱい
スキップするように
心が動く日、動かない日
違った時の流れがある
気づけば終わってしまう物語のように
上の空で過ぎ去っていく
あなたの刻む日々はどんな物語を紡ぎますか
できることなら
そのページとページのあいだ
めくる手の隙間に憩い
ひとときの休息をあげたい
日々のあいだを吹き抜けていく風となって
#遠くの空へ
「卒業の成仏」
終わりも始まりも
告げられることなく
区切りなく
手から離された
風船のように
川の流れにたゆたう
浮草のように
ただふわふわと漂った。
立ち止まると
もうそこは
一面に花畑が広がる季節
チューリップが
庭を華やがせている。
生命の芽吹きの時期、
おっはよーう!と
もぞもぞ蠢く虫や新芽。
あんなにも揺り動かされた
感情や笑い泣いた時間
振り返る暇もないままに、
激動の今に流され、埋もれ、
大切な日々が
乾いた砂漠の
ひと粒の砂となって
消えてしまうのは
あまりに惜しい。
ひとつひとつが
大切な記憶のかけら
過ぎし日々の形が
いつか
ぼんやりとでも
浮かび上がってくるように
今はホロっと
こぼれた愛しき断片を集めよう。
#春爛漫
今日みた
冷たい雨
チューリップ
すり減った階段
パソコンの画面
クッキー缶から飛び出す鳥
目に映るすべてを
数え尽くすことなんて
できないが
目に映ったものが
みんな記憶となって
わたしを形づくる
泉になる
あなたの瞳にも
わたしの知らない記憶を
無数にもった泉が。
みつめれば みつめれば
その泉にたどり着けそうで
どこまでも泳ぐ
#君の瞳を見つめると