「わかる -ある関係性にもとづいて-」
わたしとあなた
では
ずいぶん変わって
しまったことが増えた。
隣にいるだけで
手に取るように
わかっていた、
あなたのこころが
今はわからない。
同じ木から生まれ育ったけれど、
ちがう川の流れに
散った木の葉のように
時の流れとともに 離ればなれに
押し流されていくのだろうか。
取り巻く環境や
一緒に過ごす人たち
そのちがいの中に身を浸し、
ずっとこのまま わかりあえない溝は
深まっていくのだろうか。
ひとのすべてを
わかることは
もう諦めた。
わからなさから
飛び立つ関係性。
わからない けれど
わかりたい と思う
その気持ちだけは
かわらない。
#ずっとこのまま
骨の芯から冷えるような日。
そんな日こそ詩の言葉が
真摯にまっすぐ届き、
身体中に染み渡る気がする。
澄んだ冬の空気のなか、
食べる言葉は格別うまい。
#寒さが身に染みて
「ハタチ」
小学生くらいのころ
まだちいさなワタシは言いました
早くハタチになりたいな
思い描いたハタチの私は
うんと背が高くなり
おしゃれをして
「漠然とした希望」
という泡の中にいた
あの時のワタシは
どんな大人に
なりたかったんだろう
今のわたし
ハタチはずんずん遠のき
「漠然とした不安」
の中にうずくまっている
大人なのに
子どものようなまま
世間に嘘をつきながら
生きているような気がする
得たものより
失ったものを数え
ワタシの濃度を薄めながら
生きているような気がする
外から武器を得て
固い鎧を身にまとうような
強さもあれば
内にあるものを守り
心の中の結晶を
研ぎ澄ませていくような
強さもあると思う
固くとも
芯は柔らかく
冷たくとも
芯は赤々と燃え
ハタチからも
確かにつづいている道を
歩むしかないのだ
どうかわたし、
ワタシと私を守って
#20歳
「みかづき」
満月になると
オオカミになるのは
オオカミ人間だけじゃないみたい
男という動物は
よっぽど
単純な生き物なのね
女もまた
月に引かれ
月に押され
ゆら ゆら
揺られながらながら
彷徨う旅人
あんなに細くなった新月
今日、月に願えば
叶うと言ったのはだれ
月に抱かれて
支配されて
生きている
わたしたちは今晩
もっとも動物にちかづく
#三日月