【あの日の温もり】
あの日の母の温もりがまだ私を縛り付けて離さない。
あの時母の温もりさえ知らなかったら。
あの日に母に抱きしめられることがなければ。
今苦しむこともなかった。
母は私に冷たい態度をとる人だった。
泣けば怒鳴られ、笑えば泣かれ、話しかければ睨まれる。
そんな生活を送っていた。
そんな生活にも慣れた頃、私が12歳になった年だった。
母がケーキを買って帰ってきて、母に抱きしめられた。なぜ抱きしめられたのかわからなかった。だが母は「ごめん、ごめんね。こんな母親でごめんね」と言い続けていた。
その数日後母は失踪した。噂では仕事で出会った客の男と駆け落ちしたそうだ。
今どこで何をしているかは見当がつかない。
それなのに私は母に抱きしめられたあの日から母の温もりを忘れられずにいる。
会えないとわかっていても無性にあの温もりを求めてしまう。
あぁ、こんなことならあんな温もりなんて知りたくなかった。教えてほしくなんてなかった。
いっそのことあの日母の手で死んでしまいたかった。
あいしてるよ、この世で一番大嫌いなまま
【cute!】
かわいいかわいいかわいい!やっぱり私の推しがこの世でいっちばんかわいい!
何してたってかわいいんだから!
踊って歌ってる姿はもちろん、ご飯を食べてる時も変顔してる時も笑ってる時も泣いてる時も温泉ではしゃぐ姿も、タクシーがなかなか捕まらなくて不機嫌になっちゃうところもぜーんぶ!かわいいの!!!
でも最近は可愛いと思えない日の方が多いんだぁ。
だぁって、私以外の女と遊んだり喋ったりしてる貴方はかわいくないもの。
まぁ、そのうち女遊びなんかやめてかわいい貴方に戻るよね!
【記録】
あなたの行動全てを書き留めて、カメラに収めて、音を拾わないと…
あなたがこの世にいたと言う証明を残さなきゃ…
今日は好きな子とデート…ね、私以外の女の子の隣で笑うあなたなんて見たくない。
あぁ、そうだ…あの子を×××しちゃえば…
今助けてあげるね、愛しの貴女
【さぁ冒険だ】
冒険、それはロマン。
命をかけた戦い、この世のどこかに眠る財宝。
そして、姫を助け出だす喜劇。
だが、オレが望むのは喜劇なんかじゃなく残酷な悲劇だ。
その方が面白いだろう?
さぁ勇者たちよ、存分にオレの手の上で踊り狂え!!
【一輪の花】
一輪の花、と言われれば何を思い浮かべるだろうか。
私は薔薇である。理由は特にない。
好きな花なら、彼岸花が好きだ。
彼岸花はなぜか私が生まれた日に庭に咲く花であった。
彼岸花は母の好きだった花らしい。私の育て親である祖母から聞いた。
母の命日が私の生まれた日であり、母の好きな花が彼岸花であったと言っていた。
生前母は花言葉が好きだったそうだ。
彼岸花の花言葉は確か…あぁ、そうだ
"また会う日を楽しみに"
亡き母であるはずだが、私は母からの愛を感じられずにはいられなかった。
彼岸花の花言葉を知った日から私の好きな花はずっと彼岸花だ。これだけは私が死ぬまで変わることがないだろう。