【手紙の行方】
彼から貰ったものの中で一番大切にしていたものを無くしてしまった。
あぁ、ああ、どうしましょう。彼からの愛の記しが…、
大切にしまっていたのに、どこへ行ってしまったのか…
「ばあちゃん?何してんの?」
「あぁ、そうちゃん、陽平さんが昔にくれたお手紙がどこを探しても見つからないんだよ…」
「え?手紙?…もしかしてじいちゃんが初めてくれたって言ってた手紙の事?」
「そう!それのことだよ、そうちゃん場所を知っているのかい?」
「その手紙、じいちゃんの棺桶に入れて一緒に焼いたんじゃなかったの?」
「棺桶…あ、あぁ、そうか、そうだったねぇ、」
「もぉ〜しっかりしてくれよ?ばあちゃん」
「悪いねぇ、気をつけるよ」
そうか、陽平さんはもうこの世には…私もボケたものだね…
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陽平さん→亡き夫
そうちゃん→孫
【輝き】
輝きを失った神など誰の眼中にもない。
「なぁ、そうだろ?哀れな"元"神様や」
そう言った男は原型を留めていない何かを力の限り踏んづけた。
【時間よ止まれ】
人間というのは実に脆い生き物だ。
今まで見た人間は皆、100も生きられなかった。
だがアイツは100を過ぎても生きている。
そんなアイツもこの頃は弱々しくなってしまった。
嗚呼、あぁ…お前まで私を置いていくのか。
お前が死ぬくらいならこの世界の時など止まってしまえばいい。
【君の声がする】
いつも君のことを考えてるんだよ、忘れたくても忘れられないんだ。
花が咲くように笑う顔も、可愛らしい仕草も、僕のことを呼んでくれる優しい声も。
君といなくなった後でも僕の頭の中では君の声がするんだ。
この生涯で君以上に思える人はもう二度といないだろう
【ありがとう】
「貴方が死ぬ時には私も一緒に着いて行くって約束をしたね。だけど私には貴方以外にも生きる理由が出来ました。だから約束を守ることはできない、ごめんね。これまで幸せにしてくれて私に生きる理由をくれて、ありがとう」
そう言う彼女は泣きながら、でも何処か幸せそうな顔で自身の腹を摩った