木々の間を、青い風が吹き抜けていく。
じわりと汗ばむ肌に当たって、ひんやりと心地良い。
この涼しさは都会のビル街では味わえない。避暑地ならではだ。
夏休みに入り、この別荘にやってきたのはほんの昨日のこと。
私はこの緑溢れる場所が好き。宿題が山積みでも、この場所で過ごせるから、夏休みは好きだ。
しゅーっとまた風が吹く。
夏の始まり。爽やかな緑の匂いがした。
遠くへ行きたいな……。
仕事帰り、満員電車に揺られ、窓に反射する自分の顔をボーっと見ながら、不意に思った。
何か大きな痛みとか苦しみとかつらさとかがあるわけじゃない。仕事はやりがいがあるし、同僚や上司にだって恵まれてる。それでも、小さな疲れが積み重なって、こんなふうに、日常から逃げ出したくなる瞬間がたまにやってくる。
漠然と遠くへ行きたいと思うだけで、実際のところ、別に遠くへ行かなくたっていい。何でもいいから非日常に浸りたい。そんな感じ。
今週末、日帰り温泉にでも行ってみようか。映画を観に行くのもありだな。夢の国に入国して、ゆっくり世界観を堪能するだけでもいいな。
目を閉じて、いろいろと取り留めなく考える。
それだけで、疲れでズンと重かった頭の芯が、少し軽くなる感じがする。
今日は水曜日。週末まであと2日あるけれど、週末に非日常が待っていれば、何とかなりそうな気がする。
私は目を開けて、窓に映った自分の向こう、煌めく夜景を見て、そう思った。
クリスタル 後日書きます
夏の匂い 後日書きます
遠くの方で、黒い雲が激しい雨を降らしている。風に煽られ斜めに降り注ぐその様は、風にたなびくカーテンに似ている。
時折ビカリと光る稲妻と、遅れてやってくる轟音を聞きながら、どうかこちらには来ないでください、と祈ってみる。
嫌いなのだ、嵐は。心をざわつかせるから。
私の祈りも虚しく、雨のカーテンはこちらへ近づいてきている。
このあと窓を打つだろう雨の激しさを想像すると、気が滅入ってくる。
同じフロアの同僚たちも、雨の気配に少し浮き足立っているようだ。
私は、帰るまでには止んでくれよ、と祈りながら、ひとまず仕事に集中しようと、デスクへ向き直った。