人生にはいろいろな岐路がある。
このときこうしていれば、あのときああしていれば……小さなことから大きなことまで、私にもたくさんあった。
今、一番思うのは、あの日、君への連絡を絶ったこと。
君の行動が、あのときの私にはつらかった。あのときは、君の気持ちがわからなかった。だから、もうこの関係は続けられないと思った。
それが、今では、わかるようになってしまった。
あのときの君は、こんな気持ちだったのではないかと、想像できるようになってしまった。
あれから、私にもいろいろあったから。
今では、君ともわかり合うことができるかもしれないと、思ってしまう。自分から絶った関係に、夢を見てしまう。それはきっと、君と過ごした日々には、よろこびが確かにあったからだ。
もしかしたら、本当にわかり合えるかもしれない。
もしかしたら、君もまた変わって、わかり合うのは難しいかもしれない。
ねえ、あれから君はどうしていますか。
私との日々は、まだ君の中にありますか。
君との日々を想いながら、今日も私は、こたえのない問いを繰り返すのです。
真冬の夜、仕事の帰り、独り、バスを降りて、溜まっていた息を吐き出しながら、空を見上げた。
よく晴れた都会の夜空。星は少ないが、特徴的な三連星はすぐに見つけられた。オリオン座のトライスターベルト。そこから星を辿っていけば、オリオンの全容が捉えられる。
――ああ、大きいな。
単純な感想が、ふわりと胸に浮かぶ。
それは、胸の中にあった他を押しのけて、広がっていく。
大きな輝きで心が満たされて、痛みも、悩みも、ちっぽけに思えてくる。
その場で立ち止まって深呼吸をした。冬のキリリと冷たい空気が肺に満ちて、気持ちがよかった。
見上げた空には、偉大なオリオン。
ここにあるのは、さっきより軽くなった心と体。
明日も、頑張れそうな気がした。