〝たまには〟
決められた服を着て、決められた道を通って、
毎朝学校に行く。
何も変わらない毎日を、
今日も繰り返していくのだと思うと、
少し足取りが重くなる。
思わずため息をついたが、その音は書き消された。
「ガァーガァー」
…カラスだ。
道の真ん中を陣取っている。
狭い道での嘴は、もはや銃刀法違反。
近づけば、逃げるかもしれない。
でも、襲われるかもしれない。
通学路を通らないのは校則違反になってしまう。
でも、もう逃げるしかないんだ。
だって怖いから、ほんとに怖いから。
たまには、自分の意志で別の道に行こう。
〝大好きな君に〟
拝啓、大好きな君に
君の優しいところ、
少し頼りないところが大好きでした。
でも、君の好きだったところが、
嫌いなところに変わっていって、
君のことを好きだと思えなくなってしまいました。
ごめんなさい、別れてください。
身勝手でごめんなさい。
でも、このままじゃ、君を傷つけてしまう。
さよなら、大好きだった君へ想いを込めて。
〝ひなまつり〟
スーパーで、買い物をしていると、
ひなまつりの歌が流れてきた。
ひなまつりといえばひなあられだが、
最近はひなあられを食べる機会もなくなってしまった。
大人になって買うのも恥ずかしいし、
姪っ子が来てくれないかな、なんて。
他力本願だけれどね。
〝たった一つの希望〟
キラ〜キラ〜、と音がなる。
ゲームのガチャを回す音。
もう何回目だろう。
確定演出が来ても、目当てのものは当たらない。
長いロードが来ることだけが、たった一つの希望だ。
〝欲望〟
なかったら大変だろうけれど、あっても困る。
人の欲望は、無限に膨張するのだ。
コントロールすらできない人間に、
何故こんなものがあるのか。
〝列車に乗って〟
がたんごとん、がたんごとん。
列車の揺れがリズムを刻んでいる。
列車のシートほど、
眠りを誘うものはあるのだだろうか。
列車に乗って、まどろみの中へ。