小さな手大切な手を離してしまってから、2年が経つ。
すぐに迎えに行く予定だったが、現実は甘くなかった。
いつの間にか走れるようになり
いつの間にか口達者になり
知らないところで、どんどんと成長していく。
また、みんなで手を繋いでよく歩いたあの道を歩きたい
と願いながらあの子に会いに行く。今日はどんなお話をしようかな。
夜になれば、早く病気を治さなくては。
と空いた手を握りしめながら涙する。
泣く資格なんてないのに。
#手を繋いで
「疲れてるのに運転させてごめんね」
「迎え来てくれて申し訳ない」
いつも私は「ごめんね」と「申し訳ない」
と言ってしまう。
そんな私を彼は「大丈夫だよ。なんでごめんねなの?」
と悲しそうな顔で問いかけてくる。
いつだか、SNSで『「ごめんね」を「ありがとう」に言い換えよう。』という投稿を見て、ハッとさせられた。
一緒に出かけて楽しい気分を、「ごめんね」のひと言で台無しにしてたのかもしれないと。
それから私は、「ありがとう」と言うようにしている。
「今日も遠出してくれてありがとう!」
「忙しいのに時間作ってくれてありがとう!」
「迎えに来てくれてありがとう!」と。
彼は、笑顔で答えてくれる。
「俺も楽しかったから、ありがとう!」
「顔みたら疲れが取れた!ありがとう!」
「会いたかったから良いんだよ、ありがとう!」と。
「ありがとう」は魔法の言葉なのかもしれない。
#ありがとう、ごめんね
『逆さま』という言葉を聞いて
ぱっと連想出来なかった。
逆さまとはなんだろうか。
よく使うが、本当の意味を知っているのか。
考えさせられた。
分かっているようで、意外と日本語の意味を理解していない。
今より知識を増やして、賢くありたいと思った。
「すごい!!!綺麗!!!」
まるで5歳児のようにはしゃぐ私。
宝石箱のような光が沢山散りばめられて居る中で
6分毎にシャボン玉が飛び出てくる。
彼がサプライズで連れて来ようとしてたらしい。
だが、前日に別れの危機を感じる喧嘩をした。
今ここの場にいるという事は仲直りした訳だが、終わりかと絶望するくらいの喧嘩だった。
「ありがとう!ほんとに綺麗!連れてきてくれてありがとう!」
と言う私に彼は
「どういたしまして。」
と優しく笑い返してくれる。
その笑顔につられて、私も笑顔になる。
なんて幸せな時間なのだろう。
いつまでも続けばいいのに、と何度も願ってしまう。
そんな私は、彼に惚れ込んでいるのだろう。
会う度、私が好きそうな場所へと連れていってくれる。
今夜もまた彼を想って、眠れない夜を過ごすのだろう。
それ程に、愛おしくて大切な存在なのだ。
#眠れないほど
「東京に住んで、自転車のカゴに犬を乗せて走るのが夢!」
いつだか母に話した事を、白い息と共に彼に話した。
「いいじゃん、可愛らしい夢だね。」
彼は常に私の話を否定すること無く、微笑みながら聞いてくれる。それだけで、私は満足なのだ。
19歳の夏に出会った男と20歳で妊娠して結婚した。
いわゆるデキ婚だ。
私の家族が欲しいと思っていたため、妊娠も結婚も嬉しかった。
だが、現実は甘くない。
定職につかず、パチスロが趣味で浪費癖な彼とは上手くいかなかった。結婚生活3年で終わりを告げた。
当時、保育の学校に通っていたが辞め、交友関係も乏しくなっていた私は、離婚後なかなか苦労した。
頼れる友達はいたものの、親の反対を押し切っての結婚だった為戻るにも戻れず1人でやるしか無かったのだ。
だが3年が経ち、母とも和解し今はそれとなくやっている。
そんな中出会ったのが彼だ。
今まで、大切にされていると思う恋愛とはほぼ遠かった私には、贅沢な恋愛をさせてもらっている。
見たかった景色や行きたかった場所、食べたいもの。
ふと呟いた事を聞き逃さず、サプライズで月に1度連れていってくれる。
「東京に住みたい。」遊びに行く度に口癖のようにつぶやく彼。
それと同じくらい「憧れで終わらせるのが1番いい」とも言う。
「東京で犬を乗せて自転車を走らす」は叶わないかもしれないが、一軒家を建てて、子供と犬と幸せに暮らす事は出来るかもしれない。
夢を夢のまま終わらせるのもいいのかもしれない。
だって、『いま』が最高に幸せで『これから』も一緒にいたいと思うのだから。
#夢と現実