祈る。
次に目を開けた時、全てが消えていませんようにと。
貴方の腕も、香りも体温も、優しいこの部屋も全てが幻のように消え去ってしまわないように。
俺が俺として此処に存在できますように。
『眠りにつく前に』
永遠に続くものなど無いのでしょう。
今日は終わり明日になり、春は過ぎ季節は変わる。巡る季節もいつ途切れるか分からない。この地球が未来永劫存在するとはかぎらないのだから。
それでも永遠という言葉を使わせてもらいたい。
俺は貴方の傍に。
命が消えても、この身が朽ちても、魂とかそんな不確かな粒子のようなものが消滅しても。
全てが無に還るまで、ここに居させて。
『永遠に』
思い描く世界は人によって様々だろう。
花で溢れた場所かもしれないし、沢山の人々が行き交う活気ある街かもしれない。
静かな渓谷だったり、絵に描いたような天国のイメージだったり、暖かな部屋だったり。
貴方の目指す世界はどんな姿をしているのか。隣に並んでそれを見たいと思った。
『理想郷』
夕焼けの道で振り向いた君の顔だとか
ラムネの冷たさに細められた貴方の澄んだ瞳だとか
二人で見上げた星空だとか
そんな積み重ねの全てを懐かしく思う
はやく君に/貴方に会いたい
『懐かしく思うこと』
もしあの時こうしていたら、なんて考える事は性に合わないんだ。
僕はいつでも自分に出来る限りのことをしてきたはずだ。勿論力及ばぬ事もあったけれど、それも全て自分の糧にし前を向いて進んできた。
それなのに、どうして君の事だけは悔やんでしまうのだろう。
あの時君に出会わなければ、僕が手を伸ばさなければ、君を手に入れなどしなければ。そうすれば君がこんなにも傷つくことはなかったんじゃないか。
それでも、何度やり直したとしても僕はきっと君を探してしまう。君を求めてしまう。
絡んだ運命の糸は解けぬまま縺れ軋んでぷつりと切れて、その先でもう一度君と出会えたらーーそうしたら、僕らは
『もう一つの物語』