【芽吹きのとき】
キープです…
【あの日の温もり】
人はきっと
思ったよりも簡単に人のあたたかさを忘れてしまう
抱きしめてくれた時の体温も
気を遣ってくれた時の優しさも
言葉一つに込められた想いも
人はきっと
寒くなってから初めて気づく
そばに温もりがあることが当たり前で
そのあたたかさに甘えていたから
あの日の温もりになる前に
今この瞬間の温もりのうちに
人はきっと
あたたかさを返すべきなんだろう
fin
【cute!】
君には「かっこいい」という形容詞は似合わない。
かと言って、「可愛い」もなんだか違う。
やはり、「cute!」と叫びたくなる。
どう思う?
ソファでくつろぐ我が家の姫に尋ねても、ペルシャ猫特有のふさふさとした毛並みを揺らし無関心。
fin
【記録】
『ああああやばい推しが髪切ってたんだけど長めの方が好きだと思ってたのに短髪も当然の様にどタイプで死ぬ今日が命日かもしれない』
句読点一切なしの推し記録。
日にちがわかるようカレンダーの予定設定を利用して書いている。
誰にも言えない心の叫びは、いっそのこと記録した方がいいと思う。
今日も今日とて、ベットで記録を綴る夜。
fin
実話です←
私は身近な人(友達…?)を推しているため誰とも語れず。寂しいので記録をつけています笑
カレンダーアプリおすすめです。
【さぁ冒険だ】
「はあ…」
ため息を吐きながら机に突っ伏す。窓の外から呑気な鳥の声がする。どうしたの、と隣から笑い混じりの声が降って来る。
「宿題ギリ間に合ったー」
絞り出すように言う。1時間目の数学で宿題が出ていたことをすっかり忘れていて、慌てて朝の時間に取り組んだのだ。
「…きみ、写さないのは偉いよね」
顔を上げると、正に優等生といった風貌がこちらを見つめていた。素質ある、と呟かれる。
「何、どゆこと」
「成績伸びるんじゃない?」
「え?!」
思わず飛び上がる。運動はできるが勉強は全然で、内申点に母が落胆するような俺が?
「んー…あ」
思いついた、というように手を叩き、にんまりと満面の笑みで彼女は言った。
「気が進まないことをやる時は、冒険するぞ!って気持ちでやるといいよ」
「冒険…」
復唱したところでチャイムが鳴り、数学教師が入ってきた。
*
「ええ、そんなこと言ったっけ?」
高校からの帰り道、メガネを卒業し大きく見えるようになった瞳を広げ彼女は立ち止まった。
「言ったよ!お前、俺があの言葉にどれだけ救われたか!あれが無かったら、こんな高校行けてねーよ」
葉桜が風に舞い、道に落ちる。同じ方向なので自然と一緒に帰っていたが、ふとあの言葉を思い出したのだ。
「あれから俺、やりたくないけどやらなきゃなんないことに対する意識が超変わった。さぁ冒険だ、俺は目の前の敵を倒しに行くぞ!って。子供みてえだけど、それが合ってたみたい」
だからありがと。
照れ臭くて顔を見れなかったけど、彼女はふふっと笑った。そして、私も冒険しなきゃなあと空を見上げた。
「自分の気持ちに正直になるのって難しいからさ、私は今から冒険します!」
いきなり俺の前に立ちはだかり、彼女は真っ直ぐな瞳で言った。
「好きです。付き合って下さい!」
中1の春から3年後。あの時の俺に、報告してやりたい。
好きな人にさりげなくアプローチする冒険、して良かったよ!
fin