八色鵺

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8/15/2024, 2:31:17 PM

─── 夜の海 ───


とても静かだ
ここには誰もいない

いるのは私と水の中で眠る生き物たちだけ

音は大きくないけど少し迷惑かな
ごめんね
ここが1番の練習場所なんだ

誰にも見られないし邪魔されないから

水面の上で箒にまたがり
そっと口の中で言葉を紡いだ

パッと空が明るくなる

月でもない星でもない
夜の花を空に咲かせることが

今の私に与えられた課題

8/14/2024, 2:08:53 PM

─── 自転車に乗って ───


子供の頃に練習はしたよ
別に途中で投げ出したわけじゃないけど
結局乗れないまま今に至ってる

そんな私を後ろに乗せて走りたいなんて
君は相当変わってると思う
乗せられる私は結構怖いんだけど

安全運転で走るから大丈夫だと言いながら
なんだか楽しげに私を後ろに乗せ走り出した

走り出すと怖かったのは最初だけで
風を感じたり景色が変わる事に何故か感動した
私のトラウマをこんなにも簡単に拭い去るなんて

当たり前だけど歩くのとは全然違うね
君の背をつかんでぼんやり考えてたら
だいぶ遠くまで走ってきている事に気付く

帰りがあるの忘れてないかな

私を乗せたいと言ったのは君だからね
家に帰るまで責任はちゃんと果たしてよ

私は練習していたあの日の事故で
両足が不自由なんだからね

8/13/2024, 11:21:57 AM

─── 心の健康 ───


喜怒哀楽だけじゃないね
とても難しい
君にも教えてあげたい
作ってあげたい

ココロを

心があること
感情があることは
とても素晴らしいんだ

だけど作るべきではないのかもしれない
一歩間違えば
苦しみを与えることになりかねない

事実今の僕は
心のせいで
感情のせいで
悩み苦しんでいる

これを君に感じてほしくない

矛盾な考えを抱えながら
不安を緩和し眠る為の錠剤を口に運んだ

8/12/2024, 2:13:06 PM

─── 君の奏でる音楽 ───


素晴らしい音楽家
少なくとも私にとってはそうだった

いつも何かを口ずさみ
いつも楽譜と睨めっこ

私に最初に聴かせるのが楽しみだと
嬉しそうに話す笑顔は眩しかった

一緒に過ごした日々は私の大切な宝物

だけど君は遠くへ行ってしまった


私の手元には君が残した
大量の楽譜と楽器がひとつ

思い出に浸りながら慣れない楽器に手を伸ばし
私に聴かせてくれた曲を練習する
君が帰ってきた時に驚かそうと思ってさ


叶うかもわからない私の夢

8/11/2024, 11:20:29 AM

─── 麦わら帽子 ───


まだまだ手付きがおぼつかない
そりゃそうだ
私だって手が慣れるのに時間がかかった
手が完璧に覚えるようになるには
さらに数年は必要なんだ

簡単じゃないさ
でもやりがいはある

暑い季節になれば
年齢も性別も関係なく
大勢が好んで身につけてくれる

家業を継ぐため修行に励む孫の姿を
自分の若い頃に重ねつつ


私も大麦の稈を編む

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