─── 終点 ───
どうしてここに居るんだろう
でも仕方がない
何故か来ちゃってるんだし
不思議と怖くはないもんだな
SNSはできるけど
電話は繋がらないし写真を撮っても
ぼやけて何も写らない
ここでは決して飲み食いしてはいけないし
確か人と喋っても駄目なんだっけ
どうやったら帰れるかな
とりあえず降りずにまた寝てみるか
来た時と同じように
きさらぎ駅から逃げ出すために
─── 上手くいかなくたっていい ───
僕は僕の道を行く
信じたこの道を突き進む
誰もが無理だと指差し笑ったこの道を
たとえ教えに背くことだとしても
たとえ君と戦うことになったとしても
たとえ世界を敵に回したとしても
僕は僕の信じたこの道を
しっかり踏み締め歩いてく
光あれ
─── 蝶よ花よ ───
素敵な髪飾りをありがとう
綺麗な着物をありがとう
帯も小物も
わざわざ誂えてくれて
本当に嬉しい
泣かなくてもいいじゃない
少しだけ
ほんの少しだけ遠くへ行くだけ
私の気持ちはずっとお母さんと一緒よ
ごめんなさい
二十歳のお祝い全てを
死装束にしてしまって
─── 最初から決まってた ───
勇者として英才教育を受け
祖国を後にし各国で仲間を集め
魔界にある魔王の城へ行く
お馴染みのストーリーに魔族との対峙
全てに意味が無い事を
初めから知っていた
世界の住人は魔族を憎み
魔界の住人は我々を憎んでいる
姿形は違えど所詮は同じだと
魔王とは戦わなかった
その代わり話し合った
そして表向きの結末
勇者一行が魔王を倒し世界に平和が戻った
国王も知らない我々だけの秘密だ
要するに協定を結んだだけ
お互いにとって悪い話にならないように
私は今日も魔界へ足を運び
魔王とチェスをしながら紅茶を飲んでいる
偉大なる神々と大魔王達の戯れの答えは
私には初めから見えていた
─── 太陽 ───
太陽とは縁のない生活をしている
この街はどういう原理か常に夜なのだ
朝が来て昼になっても太陽は昇ってこない
月なら出ているがね
その月も太陽が無いと静かに光らない
と言う事は多少の縁はあるのか
街から出れば太陽が昇り沈むのを見られるが
生憎私はこの街が好きでね
余程の用事がない限り外へは行かない
灯りは月明かりと蝋燭で事が足りる
私の研究は勿論
料理も読書も問題なくできるし
この街の婦人方は編み物や縫い物も得意ときた
外が暗いだけで常に静かな街
賑わっていないわけではないんだがな
太陽の代わりに月が常にある街
実に不思議で私には住みやすいところだ