八色鵺

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8/5/2024, 2:12:02 PM

─── 鐘の音 ───


この街で生まれ住んでいる僕達には
特別でも何でもない

街の真ん中にある大きくて真っ白な大聖堂
そこにある鐘を観光客は皆口を揃えて褒める

ただの鐘なのにね
なんなら少しうるさいくらいだ

鐘には一応歴史があって
何百年も前に当時の国王が
愛する王妃に贈った品だとか

そんな昔の鐘が今でも現役なのは
すごい事なんだろうな

普段の手入れの賜物だろうが
街の人々は自分達の生活で忙しい
意識しないと手入れの事なんて頭にないだろう


だって鐘は僕達の生活の一部なのだから

それが無くなるだなんて考えた事もなかった

8/4/2024, 2:16:22 PM

─── つまらないことでも ───


そのフィルター外してみたらどう

連れに面と向かって突然言われた
なんの事かわからず聞き返すと

いつも退屈そうな顔してる
だから一度そのフィルターを外して
別の角度から見てみたらどうかと思って
君自身の日常をね

いや自分にはこれが普通で当たり前で
まさに日常なんだけど

そう答えると同時に笑いながら連れは立ち上がり
私の手を取り店を飛び出す


とりあえず頭空っぽにして
楽しむ事だけに集中する
じゃ行こうか


言われるがまま
色んな場所へ連れて行かれた

片っ端から遊び尽くす
小さな子供がするような遊びまで


頭を空っぽにして

8/3/2024, 1:32:33 PM

─── 目が覚めるまでに ───


両親の目と言葉はマジだった

なんでアタシまで行かなきゃいけないの
仕事なんだからパパとママだけでいいじゃん
アタシはグランマの家に行く
てゆかウチじゃなくて他の家にしてよ

仲の良い友達
お気に入りのショップ
いつも可愛く仕上げてくれるサロン

全部手離せってジョーダンきつい

人類の未来や進歩なんて
今日を楽しく生きたいアタシにはカンケーない

マジ無理

散々ケンカして駄々捏ねてみたけどダメだった
結局アタシも行く羽目になっちゃった


コールドスリープが解除されるまで
今の可愛いネイルがもってればいいな

8/2/2024, 1:13:35 PM

─── 病室 ───


ここには色んなこがいる

色んな人が色んな場所から
色んなこを預けにくる

とても腕のいい先生がいるんだって
悪いところをなおしてもらうの

あまりにも沢山いるから
わたしの順番はまだきてない

待ってる時間みんなとお喋りするの
話しかけても返事のない無口なこもいたけど

今日もたのしくお喋りしてたら
静かに部屋の扉がひらいて先生が歩いてくる

わたしは優しく抱きあげられた
やっと順番がきた
今からなおしてもらえるんだ

部屋をでた先生はわたしを見て


なんて素敵なアンティーク人形なの
こんな美しいこを直せるなんて光栄ね


そう言ってわたしをなおしだした
まるで魔法使いみたいに

8/1/2024, 1:25:46 PM

─── 明日、もし晴れたら ───


歴史の授業は苦手だから簡単に

気が遠くなるほど遥か昔の話
とある科学者達の功績により
人類は地球外の惑星進出に成功し

地球を捨てた


その開拓者達の子孫である私は
自然の晴れた日を知らない

生きものが生きていけるように
作物がよく育つように
常に完璧に整備された人工の天気

面白くないよね
私の知る全ては本物だけど偽物な気もする

遠い祖先が皆感じていた
晴れた日の感覚を私も感じてみたい

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