─── だから、一人でいたい。 ───
一緒に居るのは嫌いじゃないよ
ただ今は違う
特別な理由はこれといって無い
集中したい
そして楽しみたい
大好きな事に夢中になりたい
ただそれだけだから気にしないで
それでも一緒に居たいと言うなら
隣に座っていてもいいよ
退屈で寝ちゃっても知らないけど
─── 澄んだ瞳 ───
天気がいいから外へ行こうと誘われて
君の後ろをゆっくり歩くいつもの散歩道
変わらぬ日常
ずっと続けばいいのに
ふと気配を感じた
どうしたのかと尋ねる
答えはこうだ
君を見てるんだよ
君の瞳をね
いつ見ても美しい色彩だ
こう言われるのは何回目だろう
初めは恥ずかしかったが今は慣れた
それなら君も同じになるかと
意地悪っぽく言ってやった
返事は返ってこない
答える代わりにまだ君は見つめているんだね
光を失って久しいこの瞳を
─── 嵐が来ようとも ───
今夜の風は誰かの泣き声に聞こえる
森の木々はざわざわと震えている
空は真っ暗で月どころか星すら見えない
この世の終わりだと錯覚するほどに
いつも目にしている物や風景が全く違って見える
両親は仕事で不在
家には自分と愛犬だけ
布団をかぶり
小さな灯りを頼りにして
不安な気持ちをなんとか心の奥へ閉じ込める
不意に風がドアを叩き
隙間風が灯りを連れ去る
閉じ込めたはずの不安はまた溢れかけ
思わず隣にいる家族を抱きしめた
一緒にいるから。1人じゃないよ。大丈夫。
布団の中で感じる温もりが
一瞬で不安をどこかへ連れ去ってくれた
─── お祭り ───
この1週間は特別に街中が賑やかになる
確か150年だったかな
明るい時間からお酒を呑んで楽しそう
小さな子供も大人もお年寄りも
みんなが喜び浮かれてる
外の国から訪れる人もいるんだって
時間とお金を使ってご苦労様
暗くなるにつれて街の華やかさも
人々の歌い踊る音も増していく
ねぇ先生
この世を去ってから祝われるのは嬉しいですか?
先生の功績を実力を
どれだけの人が本当に理解しているんでしょうね
─── 神様が舞い降りてきて、こう言った。 ───
貴方に全てを差し上げましょう
艶やかで絹のような髪
捕えたら離さない目
優しく相手の話を聴く耳
甘く惑わせる声
刃物を持つ手
地の果てまで走れる足
神へ祈り手に入れた
誰かがくれた誰かの全て
お陰で誓いを果たせた
この身体は今、憎い相手の血にまみれている