初恋の日
今思えばただの憧れだったのかもしれない。それくらい淡い恋心だった。
些細なきっかけで人を好きになった。けれど幼い私は意気地なしで、想いを伝えることはおろか自分から話しかけることすら出来なかった。
あの人の晴れやかな笑顔が目に浮かぶ。繰り返し思い出すせいで、きっともう忘れられない。
勇気を出していたら何か変わったのかな。なんて、今さら考えても意味ないのに。
私は諦めの悪い自分に、ため息を吐いた。
明日世界がなくなるとしたら
「少し買い過ぎたかな」
買い物を済ませて帰宅する。手提げビニールは普段なら買えない食材であふれていた。
昨日、隕石の衝突でまもなく地球が滅びると報道された。世間は慌ただしいのに、いつも通りのあなたと居ると心が安らぐ。
「これで何も起こらなかったらウケるよな」
「……うん、そうだね」
日に透けた前髪を、優しい色の瞳を。大好きなあなたの横顔を目に焼き付ける。
私は少しだけ特別な、あなたとの日常を噛みしめた。
君と出逢ってから、私は……
君はずっと可愛くて優しかった。誰よりも魅力的で、私にとって世界一の女の子だよ。
君と出逢って、初めてこんな感情を抱いたんだ。自分とは差がありすぎて嫉妬なんて出来なかった。宝物みたいにきらきらと輝く気持ちを知れたのは君のおかげだよ。
君の隣には格好よくて素敵な男の人が似合うよね。どうか幸せになってね!
大地に寝転び雲が流れる
視界いっぱいの澄み切った青色。時折、白い雲が流れる。そよ風が心地良い。
君は隣で、すやすやと寝息を立てていた。
「こんな時間が続けばいいのに……」
君の穏やかな寝顔を見て、思わず呟く。どうか幸せな日々が続きますように。
「ありがとう」そんな言葉を伝えたかった
「ありがとう、よく頑張ったね」
暖かい声が耳に届く。すぐ側にある体温がじんわりと心地よい。しだいに気持ちが落ち着いて、涙が収まった。
あの人はいつだって私を励ましてくれた。勇気付けてくれた。
でも私は何を返せただろう。弱い私は、彼がどんな気持ちでいるかなんて考えもしなかった。
ごめんなさい。あの時、私も「ありがとう」と言えたら良かった。