12/3/2023, 11:44:52 AM
僕には好きな女の子がいた。名前は小林さちという。
家が近所で、幼稚園から現在、つまり小5までずっと同じクラスという腐れ縁。
いつから異性として意識するようになったのかは覚えていないが、いつも当たり前のように隣にいたので、ずっと一緒にいるうちに自然と惹かれていき、好きになったのだろう。
「来月の一日、転校するんだ」
これからもずっと一緒にいられると思っていたのに、先月唐突にそんなことを言われた。僕にそのことを伝えるときのさちの表情は、普段と変わらずにこやかで、まるで何事も無いかのようだった。
「そう、なんだ」
そんな返事しかできなかった。
転校するということは、もう僕とは会えなくなるかもしれないというのに、いつも通りに笑っているさちを見ていると、なんだかとても悔しかった。
時というのはあっという間に過ぎるもので、気がつけばさちが転校する前日に迫っていた。
あれ以降、どう接すれば良いのか分からなくなってしまい、顔を合わせてもあまり話すことができなかった。
休み時間、さちの机の周りには、クラスの生徒が群がっており、「離れていても友達だよ」「元気でね」などと話している声が聞こえてくる。
僕も行こうかとも思ったけれど、なんだか気まづく感じてしまい、結局休み時間が終わるまでさちに話しかけることはしなかった。