"みかんを食べる"
それはわたしにとってはすごく大切なこと
お母さんの怒声が鳴り響く家の中で
わたしの居場所はない
だから、いつも外に出歩いていた
目的地もなく、ぶらぶらと何時間も歩き回る
でも、不思議なんだ
お父さんが久しぶりに帰ってきたときには毎回みかんを買ってきてくれる
それを食べた日にはね、ある男の子と会えるの
いつも歩いるとばったりと出会う
あなたと会う日、わたしは必ずみかんを食べていた
ならば、みかんを毎日でも食べてあなたに会いたい
でもそれが叶わないのは…、身を持って知っていた
毎日出歩くと、お母さんが世間体を気にして
わたしを叩いて、怒声をあげて、物を投げてくるから…
そして次の日に会えた時はあなたに心配かけたなぁ
もしも、わたしとあなたと結ぶ関係がみかんなのならば
わたしは…、一生みかんを離したくはない
バカみたいな話だけれど…、、、
冬休みが近づくと、わたしはほっとする
あの地獄から解放されるのだと…
あの教室に、わたしの居場所はない
まあ、家にも居場所はないのだけれど
でも、周りから哀れの目で見られないし
先生からも変に気をつわれなくて済む
毎朝学校に行って、俯いていたら午前の授業が終わり、
逃げるように屋上に行き、お昼の時間を潰す
そして、また俯いていたら午後の授業も終わって
図書館で時間を潰して帰る
お弁当は作ってもらえないし、なにかを買うお金も
ないからお昼はいつもなにも食べない
おかげで、やせ細って、もっと先生たちに心配される
余計なお世話だよ
そんな日々から、数週間でも解放されるのだ
冬休みというものを使った人を感謝したいくらい
まあ、でも
どうせ家にいても怒声を浴び続けられる日々に
変わりはないのだけれど、、
家にも学校にも囚われることのない休みを過ごしたいな
1日でもいいから…
本当に世界には変わらないものなんてあるの?
ずっと一緒だよって言ってくれた恋人も
これからも仲良くしようねって言ってくれた友達も
子供の頃に愛してるって言ってくれた親も
結局はみんな心変わりしていく
大事な人は私ではなくなる
今回も…、ほら
「一生幸せにする、だから…」
その言葉は、本当なの?
信じてもいい?
一生…、
死ぬまでわたしと一緒にいることを約束してくれる?
でも…、わたしも
あなたに対するこの気持ちは、
絶対に変わらないのだと不思議とわかってしまう…
クリスマスがただ退屈で、早く終わってほしいと思ったのはいつぶりだろう
小さい頃は毎年退屈に思っていたけれど、あの人が現れてからは、すごく楽しいイベントだった
でも今では、
外に出ればクリスマスソングが流れ、イルミネーションでいつもより明るくなかった街が眩しい
クリスマスというイベントで浮かれている人たちが
眩しい
家に帰っても、テレビを見ればクリスマスの特番をしているからつける気も起きない
真っ暗で、静かな部屋にわたしは座っている
チッチッチという時計の音
あ…、12時過ぎた
やっと26日か
今年も終わった
この地獄の時間が
イブの夜なんて、昔から大嫌いだった
子供のころは、プレゼントなんて来ないと知っていたから、泣きながら寝ていたし、
大人になった今でも、この明るい世界の中で孤独な気持ちになる
みんなにとっては、ワクワクするようなイベントなのか
それとも恋人とと過ごしたりする大事な日なのか
わたしは、この日をずっと呪って生きていく
そんな覚悟を無意識にしてしまっていた
いつからだろう…
イブの夜がたまらなく楽しくなったのは
わたしが準備して飾った部屋を褒めてくるあなた
わたしの手作りケーキを美味しいと食べてくれるあなた
最後にプレゼント交換をし合うと、いつもわたしの気に入るものをくれるあなた
今年のプレゼントは…、"結婚指輪"…?
ほら…、またわたしが喜ぶものをくれる…
昔のあの苦い気持ちを思い出す時もあるけれど
全てあなたで上書きされる
来年は…、夫婦としてクリスマスを過ごせるのかな?