璃子

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9/4/2025, 1:02:40 PM

『言い出せなかった「」』

離れて暮らす母と2人で旅行に行った。

温泉にゆっくり浸かりながら、思い出話や近況報告で盛り上がって。

夫とは結婚4年目。
孫はいつかしら!なんてハラスメントも慣れたもの。
友達のように何でも言い合える母が私の自慢でもあった。

あんなこと言ったけど冗談よ!好きにしなさい!
あんたが幸せなのが1番なんだから!

そう言い残して、母は私の生まれ育った家に帰っていった。


ごめんね。子供を作らないのは。
仕事が楽しいからでも、2人で過ごしたいからでもないんだ。


私には、夫ではない好きな人がいる。


最低なその一言だけは、どうしても言い出せなかった。

6/3/2025, 1:40:58 PM

『約束だよ』

誰かと指切りをしたのはいつだっけ?

大切な約束があった気がするのに。
忘れてしまうような薄情者なのか、私は。

そんな思案をよそに、今日も忙しく1日は流れていく。

仕事も家事も育児も得意とは言えない。
全部を完璧にこなせるほど器用でもない。

それでも私なりに悩み、楽しみ、助け合い、日々を過ごしている。
きっとこれからもたくさんのものを重ねていくんだろう。


...あぁ、そうか。

忘れてしまったのではなくて。

「ずっと一緒にいようね。」
「うん、約束だよ。」

いつかの幼い約束が、日常になっていたことに気付く。

5/18/2025, 5:48:33 AM

『まだ知らない世界』

世界の外側には何があると思う?

私は、世界は割れない風船みたいになっていて、
誰かがずっと膨らまし続けてるんだと思う。

外側にたどり着かれそうになったら、慌てて壁を引っ張って。
内側で科学してる人との戦いが繰り広げられてるの。

私たちが顕微鏡で小さな小さな世界を見るのと同じで、
誰かが私たちを見てるのかもしれない。

外側に行ける日は来るのかな?
でもきっとその世界にも、また更に外側の、
まだ知らない世界が続いてるんだよ。

5/5/2025, 5:43:44 AM

『すれ違う瞳』

私とあなたは、ある時までは向き合う関係だった。

今では同じ方向を見ていて。
時々どちらからともなく隣に目をやると、
視線に気付いて笑いかけたり、首を傾げたり。

常に視界に居なくても、そこにいる安心。

けれど、ある日。

私がいつもの信頼を向けた、その、ふと、一瞬。
あなたの瞳が揺らいで、するりと逃げた。

12/14/2024, 1:16:05 PM

『イルミネーション』

人工物なんて好きじゃなかった。

綺麗って思わせるために誰かが作ったんだろう、って
斜に構えて街を眺めていた。

でも君と初めて同じ道を歩いた時。

「綺麗だね!」
目を輝かせる君がとても嬉しそうで。

君をそんな顔にしてくれる灯りが、冬の楽しみになった。

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