『君と一緒に』
君と一緒にいられなくなったのは、
僕にとって大きな痛手であり進歩だった。
染まりきった心が元に戻るまでにはまだ時間がかかるけど。
一生かけても戻らないかもしれないけど。
君と一緒にいたかったな。
そう思いながら、またひとつ、前に進む。
『言い出せなかった「」』
離れて暮らす母と2人で旅行に行った。
温泉にゆっくり浸かりながら、思い出話や近況報告で盛り上がって。
夫とは結婚4年目。
孫はいつかしら!なんてハラスメントも慣れたもの。
友達のように何でも言い合える母が私の自慢でもあった。
あんなこと言ったけど冗談よ!好きにしなさい!
あんたが幸せなのが1番なんだから!
そう言い残して、母は私の生まれ育った家に帰っていった。
ごめんね。子供を作らないのは。
仕事が楽しいからでも、2人で過ごしたいからでもないんだ。
私には、夫ではない好きな人がいる。
最低なその一言だけは、どうしても言い出せなかった。
『約束だよ』
誰かと指切りをしたのはいつだっけ?
大切な約束があった気がするのに。
忘れてしまうような薄情者なのか、私は。
そんな思案をよそに、今日も忙しく1日は流れていく。
仕事も家事も育児も得意とは言えない。
全部を完璧にこなせるほど器用でもない。
それでも私なりに悩み、楽しみ、助け合い、日々を過ごしている。
きっとこれからもたくさんのものを重ねていくんだろう。
...あぁ、そうか。
忘れてしまったのではなくて。
「ずっと一緒にいようね。」
「うん、約束だよ。」
いつかの幼い約束が、日常になっていたことに気付く。
『まだ知らない世界』
世界の外側には何があると思う?
私は、世界は割れない風船みたいになっていて、
誰かがずっと膨らまし続けてるんだと思う。
外側にたどり着かれそうになったら、慌てて壁を引っ張って。
内側で科学してる人との戦いが繰り広げられてるの。
私たちが顕微鏡で小さな小さな世界を見るのと同じで、
誰かが私たちを見てるのかもしれない。
外側に行ける日は来るのかな?
でもきっとその世界にも、また更に外側の、
まだ知らない世界が続いてるんだよ。
『すれ違う瞳』
私とあなたは、ある時までは向き合う関係だった。
今では同じ方向を見ていて。
時々どちらからともなく隣に目をやると、
視線に気付いて笑いかけたり、首を傾げたり。
常に視界に居なくても、そこにいる安心。
けれど、ある日。
私がいつもの信頼を向けた、その、ふと、一瞬。
あなたの瞳が揺らいで、するりと逃げた。