『夢をみていたい』
「女の子はね、何歳になっても夢をみていたい生き物なの」
そう言っていた、いとこのお姉さんは、昔からの夢を叶えた。
純白のドレスに身をつつみ、スワロフスキーの輝きをまとう。彼女が動くたびに、ドレスにあしらわれたスパンコールがキラキラと瞬く。
いつもよりちょっと濃いメイクをして、髪にもラメを、黒真珠のような艶を持った美しい髪は結い上げられ、青いかすみ草の髪飾りがよく映える。
「ねぇさん、おめでとう、とってもきれいよ」
「ふふふっありがとう!あなたもとっても素敵よ!」
「でも、本当に良かったの?私、まだ学生よ?プロじゃないのに」
「もちろん!私の晴れ舞台のスタイリングは、貴女にやってもらうって、小さい頃の約束だもの」
「そんな小さい頃の約束覚えてたのにびっくりしたよ」
小さい頃、ねぇさんの夢は「お嫁さん」私の夢は「メイクさん」
ねぇさんの結婚式のメイクは私がやると言ったのはもう10年も前のこと。
「あ〜今日の私最高にかわいい!!ありがとう!凄腕メイクさん?」
鏡のなかに映る自分の顔をマジマジと見つめるねぇさんは贔屓目なしにみても美しい。
「これからもよろしくね?」
「ねぇさんが予約が取れないくらい有名になってやるわよ」
少し見つめ合って、耐えられなくなって同時に笑う。
コンコンっと終わりの合図がなった。
「もう時間かぁ、緊張する」
「いってらっしゃい、この私がメイクしたんだもん!ねぇさんは最強よ!!」
「……それもそうか!見ててね私の晴れ姿!」
ハイタッチして、ねぇさんはスタッフさんと待機場所に向かっていった。
私は会場に向かう。専門の勉強をしてるとはいえ、私はまだ学生。まだまだプロの技術には敵わない。
それでも、ねぇさんは私を指名した。自分の夢の舞台に、私にも夢を見せてくれた。
まっていて、きっと私もすぐに追いついてみせるから。
20歳
1つの人生の節目である。子供から大人へ、1つ階段を登る年齢である。
20歳になった日、思い描いていた人生を送れているだろうか。
卒業、就職、転職、結婚、出産、育児……
20を過ぎるとその先は、今までとは比べ物にならないくらいの忙しさ。年々早くなっていく時間感覚。思うように動かなくなっていく体、増えていく仕事、重くなる責任、社会から与えられる重圧。
そんな中、体が大人になってしまった自分の精神はまだ子供のように感じる。
そこで、将来の夢ってやつをもう一度考えてみた。老後の夢だ。
諸君、私はファンキーなババアになりたい。
白髪が増えてきたら白髪部分をド派手に染め上げて、軽自動車を乗り回し、サングラスと革のジャケットを羽織って、スーパーの特売を狙う。
職場で、泣いている若手がいればとことん話を聞き、横暴になってきた中年がいれば活をいれる、鬱陶しく思われてもお節介を出すババアになりたい。
娘、息子、嫁、孫、全てを平等に愛し、頼りにされる義母になりたい。
判断力があるうちに免許を返納し、自らの施設、葬式、墓まで決めてから認知症になりたい。
そして、愛する夫と子供や孫に看取られ、笑いながら逝くのが私の夢だ。
私は今月で27歳になる。もうアラサーである。
転職してようやく3年目、人間関係や、自分の仕事のできなさに悩んで、再度転職を考えているほど。
でも、つよいババアになりたいと思った。
占いでも「定年を超えて働くパワフルおばあちゃんになる」と言われた。
例えこの職場が耐えられなくても、きっと次が見つかる。私は人間、咲く場所は自分で選べる
お題「消えない焔」
*これは私が書いている小説の一部です。
【奪われた日常】ルイ
地面が、湿った土と温かい血の匂いを混ぜて立ち昇らせていた。ルイは、耳の奥で、風の轟音よりも鮮明に、地に伏した同胞達の魔力の消滅を聴いた。 首を切り落とされた父と母の亡骸が、乾き始めた土の上で、首のないまま、何かを訴えているように転がっている。鮮血は、もう流出を終えていた。
「さぁ魔族共観念しろ」
輝かしい光を放つ剣を振りかざし、人間が吠えた。
剣が振り下ろされる度、同胞の亡骸が増えていく。
私達がお前達に何をした。
何故私達は攻撃される。
「勇者様!」
1週間程前、森で倒れ、保護してやった人間の娘が、足元に転がる少女の亡骸には目もくれず、男に駆け寄っていく。
人間の娘と仲良くなりたいと言っていた、花を愛したあの子の瞳は、もう光を映すことはない。
あぁ、そうか。この娘が、人間から隠されていた里の場所をこの者共に伝えたのか。本来、里の入り口には認識阻害の術が張り巡らされているはずだった。しかし、今の里の入り口には、あの娘の字で書かれた解呪の札が貼られている。
勇者と呼ばれた男が連れてきた人間たちが、我々の家を、町を、住民を、築き上げてきた物全てを瓦礫に変えていく。
「きゃぁぁ!!まっ……魔族ですわ!勇者様!」
あの娘が男に縋り付く、男の外套で顔を隠しているが口角が上がっているのを私は見てしまった。
なんと醜悪な顔だろう、花が綻ぶような笑顔を見せていたあの顔は偽りだったか。
「なぁ………勇者とやら………何故私達を殺す?」
無駄だと分かりながらも、仲間たちの亡骸に回復魔法を使い続けた私の身体はすでに魔力切れていた。魔力が切れた私の体は、言うことを聞かない。どうせ殺されるならと、理由を問うてみた。
「魔族よ、貴様らは多くの人を傷つけた…これはその罪に対する制裁である。」
あの娘と対照的に、男は酷く悲しそうな顔をしていた。男は「すまない…こうするしか無いんだ」と無音の謝罪を口にすると。剣を振り下ろす。私の視界は赤く染まった、最後に見たのは男の今にも泣き出しそうな酷く歪んだ顔だった。
【蒼炎の決意】ルイ
冷たい地面に伏し、ただ眼前に広がっていく赤を眺めていた。
倒壊した家々からは、無駄に豪華な鎧をまとった者たちが金目の物を運び出していった、あの鎧は王国の近衛騎士団だろう。自分達が積み上げてきた日々を土足で踏み荒らされるように思えた。腸の奥底から何か熱いものがこみ上げてくるように感じた、内側から焼かれる程の怒りと憎しみ。それに応じるかのように、私の身体は魔力を回し始める。
このまま目覚める事なんてなければ良かったとも思った。けれど、私の身体は意志に反して、枯渇した魔力を使い治癒魔法を使い続ける。まるで死にたくないと藻掻いているように、傷を塞いでいく。傷が塞がっていくたび、生き残った事実が鉛のように重く、心臓を押し潰した。
動けるようになる頃には、人間達は残っていなかった。残っているのは、無残にも切り捨てられた無数の同胞の亡骸のみ。
「ルアナ…」
花が好きだった彼女、ルアナの側に腰を下ろす。
首の無い身体は、首を跳ねられるまで彼女が抱えていた花に飾られている。彼女の好きな白い、華奢な花々は、赤黒く染まっていた。
少し離れた場所に、彼女の黒髪が散らばっているのが見えた。恐怖と驚きに染まった彼女の顔が、私を見つめていた。
「ごめん、ルアナ」
「君を……守れなかった」その謝罪を受け取ってくれる人はもういない。
「せめて、安らかに眠っておくれ……」
白い花の汚れを拭い、彼女の首元へ添える、傷口が目立たないように。
まだ柔らかい彼女の顔に触れる、仄かな温かさは瞬く間に流れ出ていってしまう。
せめて、せめてこれ以上踏み躙られる事が無いようにと、灯を落す。私の手から落ちた青白く輝く灯は彼女の頬を撫でた、彼女を包み込むように優しく燃える青い炎は、数分もしないうちに村全体を包み込む。
燃やし尽くし、灰さえも残さない。
もう二度と、人に弄ばれることがないように。
安らかに眠れ同胞達よ。
青い炎は全てを無に帰し、私の復讐心に火をつけるのに十分な火力を持っていた。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
何もかも消えていく、ルアナもお父様もお母様も、居場所が全て消えていく。悲しみ、怒り、恨み、負の感情が渦巻き、自分を保てなくなりそうになる。
「………っ」
ぱさりと顔に髪がかかる。彼女が綺麗だと褒めてくれた、腰まで伸ばしていた髪。それを衝動的に短剣で切り落とす。頭が軽くなるのと対照的に胸に鉛が入り込んできたように体が重くなる。悲しむな、怒れ。嘆くな、恨め。
切り落とした髪を、未だ強く燃える炎に焚べる。
今、この時をもってして、何もできなかったルイと言う少年は死んだ。
「俺は、この世界を壊そう…」
そう呟いた言葉は、誰かに届くこともなく、風の音にかき消されていった。
俺はもう、何もできない魔族ではない。この身に宿すは世界を飲み込む復讐の炎だ。
『夏』
蝉が騒がしく鳴いている。
今日は昨日より少し涼しいからかな、外で活動している部活も多い。
蝉の声と学生の声が混ざって空へ溶けていく。
遠くから、吹奏楽部が音出しをしている音も合わさった。
「あ~終わらねぇ〜」
「口じゃなくて手を動かせ、手を」
夏休みの真っ只中、外から聞こえてくる喧騒をBGMにクーラーの効いた教室で作業を進める。
「にしても涼しいなぁ…ホントにここ教室かよ」
「冷房ガンガンかけてんだから涼しいに決まってんだろ」
「いやぁさ、夏の教室って言ったら、あの纏わりついてくる暑さと扇風機と窓から入ってくる生ぬるい風だろ〜〜」
「いつの時代の話してんだよ」
そんな軽口を叩きながら、着々と作業を終わらせていく。
「あのさぁ」
「なんだよ」
終わりも近づいた頃、ふと思いついたことを提案してみようと、相方を見た。相方はめんどくさそうな顔をしている、失礼な。
「エアコン止めて、窓開けても良い?」
「はぁ?!こんなクソ暑いのに?!俺はやだね!!」
「えぇー?あの頃の教室体験しようぜぇ?ノスタルジックに浸ろうぜぇ?………まぁ承諾なくやるんだけどねっ!」
エアコンを止めて、窓を開ける。むわっとした熱気が教室に舞い込んでくる。
なんか後ろでギャーギャー言ってるが知らん。
「あぁ〜〜これだよ、これ」
「うわぁあっつ……でもなんか懐かしく思うのが腹立つ」
「だろぉ?」
熱気の中に、少し爽やかな風が混ざっている。土の匂い、蝉の鳴き声、生徒達の声、全てが懐かしくなる。
急にガラッと教室のドアが開く。
「うわ蒸し暑っ!せんせー達何してんの?エアコンもつけないでさぁ、あっそうだ!たなせんが二人のこと呼んでたよー」
「おー高橋か、分かった、ありがとな」
「高橋ぃ、お前何度言ったら先生のこと略すのやめんだ……田中先生に小言言われるの俺達なんだからなぁ」
「じゃぁ俺は忘れ物取りに来ただけなんで!しつれーしまーす」
元気よく走っていく高橋に、廊下は走るなと叫んでから、資料をまとめ教室を後にする。
「田中先生が呼んでるって何だろうな」
「さぁ?ただいい話ではないのは確か」
「嫌だぁ」
学生時代に思いを馳せていた時間は早々に終わりを告げた、新任教師の俺達は、学年主任の田中先生の元へと急ぐのだった。
「心だけ、逃避行」
少し目を閉じてみる。
周りの喧騒が、すっと遠くに離れていく。
ピンク色の雲や、オレンジ色の空。
ふわふわと空を飛ぶ空想をする。
ここが私の隠れ家。
嫌なことがあったらここへ逃げ込むの。
現実は逃がしてくれない、辛い現状は変わらない。
なら心だけでも逃避行してもいいでしょう?
ピピピッと無機質な機械音が響く。
今日の逃避行はここでおしまい。
私は現実へと戻っていく。