8/27/2023, 4:07:34 PM
「雨に佇む」
そろそろバイトに向かう時間だ。
準備を整え玄関のドアを開けた時
土砂降りの雨に気付く。
「面倒だな」
瞬間的にそんな考えが湧き上がったが、
今日は俺のワンオペデイ。
何があっても休むわけにはいかない。
頭を振ってネガティブな感情を強引に追い出し、使い古した傘を手に取る。
錆び付きが原因なのか、ワンプッシュで開く機構のはずが何度押しても全く開く気配がない。
愛傘に出鼻をくじかれ、深いため息と共に自力で傘を開く。
軒下から1歩踏み出すと雨粒を浴びた傘がバタバタバタと音を立てる。
この音は嫌いじゃない。
水溜まりを避けながらバイト先へと向かう。
どんなに気を付けてもこの雨だ。
靴はすぐにびしょ濡れになり、グズグズと嫌な音を立てた。足取りも重くなる。
突然「きゃー!」という声が響いた。
悲鳴じゃない。楽しげな声だ。
すると正面から小学生くらいの子供たち数人が、傘もささず、大はしゃぎしながら駈けてくるのが見えた。
雨に打たれることなんて気にもせず、むしろ楽しいことのように満面の笑顔でじゃれ合う子供たち。
気付けば俺は足を止め、そんな子供たちに見入っていた。
彼らが、バシャバシャと水を飛び散らせながら横を通り過ぎていく時、ふと思い出した幼い頃の記憶。